アレルギーとは何か?原因・症状・検査・治療について医師が解説

✅ 何かのきっかけで咳が出て止まらなくなる
✅ 肌が乾燥するとかゆくなる
✅ 特定の食べ物を口にするとじんましんが出る
✅ 花粉の季節になるとくしゃみが出る
このような症状がある人は、アレルギー疾患の疑いがあります。
この記事では、アレルギーの原因や病気との関係について説明します。思い当たる方は、アレルギーの基本をおさえておきましょう。
1.アレルギーの原因と仕組み
アレルギーの背景には、「免疫」と「体質」という2つの要素が関わっています。
1-1.免疫の働きとアレルギー反応が起こる仕組み
人の体には、細菌やウイルス、寄生虫といった有害なものから自分を守るため、「免疫」という仕組みが備わっています。
風邪や感染症から身を守るために「免疫力を高めよう」とよく言われるのは、この防御システムが健康維持に欠かせないためです。
しかし、環境の変化、ストレス、睡眠不足、生活習慣の乱れなどをきっかけに、免疫が必要以上に反応し、体にとって無害な花粉や食べ物、ハウスダストなどまで敵とみなして攻撃してしまうことがあります。
このように、本来であれば体を守るはずの免疫が過剰に働き、害のない物質に反応して症状を引き起こす状態を「アレルギー反応」と呼びます。
【参考情報】『Allergies and the Immune System』Johns Hopkins Medicine
https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/allergies-and-the-immune-system
1-2.アレルギーと遺伝、体質の関係
アレルギーには、「なりやすい人」と「なりにくい人」がいます。この体質には、遺伝がある程度関係しています。
たとえば、アレルギーを持つ人の子どもも、アレルギーを発症しやすいことが知られています。
ただし、遺伝するのは病気そのものではなく、アレルギーを起こしやすい「体質」なので、親の病気が子どもに発症するとは限りません。
実際には、生活環境やアレルゲンに触れる量、ストレス、睡眠、食事などの影響も大きく、遺伝と環境が組み合わさってアレルギーが起こります。
【参考情報】『Genetics of allergic disease』Journal of Allergy and Clinical Immunology
https://www.jacionline.org/article/S0091-6749(09)01742-4/fulltext
1-3.アレルギーマーチとは?
アレルギー体質の人は、アトピー性皮膚炎が良くなったと思ったら今度は喘息に悩まされるなど、形を変えて次々と症状が出ることがあり、これを「アレルギーマーチ」といいます。
代表的な流れとしては、乳児期に食物アレルギーやアトピー性皮膚炎がみられ、その後成長とともに、喘息や花粉症が出てくるパターンです。
このように、症状が年齢とともに移り変わっていくのは、皮膚の弱さや免疫の反応の特徴、アレルゲンに触れる量などが影響していると考えられています。
すべての人が同じ経過をたどるわけではありませんが、アレルギー体質がある場合、この流れが起こりやすい傾向があります。
2.アレルギーによる病気の種類
アレルギーが関係する病気はたくさんありますが、そのうち代表激な疾患を紹介します。
2-1.喘息
喘息とは、空気の通り道である気道が慢性的に炎症を起こすことで、激しい咳が出たり、呼吸が苦しくなる病気です。
喘息は、アレルギーが原因のものと、過労やストレスなどアレルギー以外の原因によるものがあります。子どもの喘息はアレルギー、大人の喘息はアレルギー以外の原因によるものが多いです。
アレルギーが原因の喘息は、ダニやホコリ、カビなど特定の物質を吸い込むと、それらを有害な異物と認識して排除しようとする免疫の仕組みがはたらくことで症状が現れます。
2-2.アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは、かゆみのある湿疹が慢性的に出る病気です。症状は良くなったり悪くなったりを繰り返します。
原因はまだ十分にわかってはいませんが、外部の刺激から身を守る皮膚のバリア機能が弱っている状態で、アレルギーを引き起こす食べ物やダニなどが体の中に侵入すると、発症しやすくなると考えられています。
◆「アレルギー専門医がすすめるアトピー性皮膚炎改善の方法」>>
2-3.食物アレルギー
食物アレルギーとは、特定の食べ物を口にすると、じんましん、咳、下痢、唇の腫れなどの症状が引き起こされる反応です。
食物アレルギーは、食べ物の中に含まれているタンパク質が、免疫のシステムの誤作動で異物と認識されることで起こります。原因となる主な食べ物は卵、乳、小麦ですが、魚介類や果物、ナッツで起こる人もいます。
2-4.花粉症
花粉症とは、植物の花粉が鼻や目の粘膜に触れることで、くしゃみ、鼻水、目のかゆみ等のアレルギー症状が発生する病気です。
原因となる主な植物はスギやヒノキですが、ヨモギ、ブタクサ、カモガヤなどの植物で引き起こされることもあります。
2-5.その他
その他、以下のようなアレルギーがあります。
<金属アレルギー>
ニッケルやコバルトなどの金属に触れたときに皮膚が反応する
【参考情報】『金属アレルギー』日本歯科医師会
https://www.jda.or.jp/park/relation/metalallergy_02.html
<薬物アレルギー>
体に合わない薬に対して免疫が過剰に反応する
【参考情報】『薬物アレルギーとは』中外製薬株式会社
https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/medicine/body/body005.html
<動物アレルギー>
犬や猫などの動物が持つ皮膚のフケ、唾液、毛などに反応する
<昆虫アレルギー>
蛾、ユスリカ、ゴキブリなどの昆虫に反応する
<ラテックスアレルギー>
ゴム製品に含まれる天然ゴム(ラテックス)に反応する
【参考情報】『ラテックスアレルギー』日本アレルギー学会
https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=13
3.アレルギーの検査
アレルギーの有無や程度、種類を調べるには、主に血液検査を行います。
3-1.血液検査
血液検査では、主に以下の内容をチェックします。
<血中総IgE値>
アレルギーになりやすい体質かどうかを調べる
<好酸球数>
アレルギーがあるかどうかを調べる
<抗原特異的IgE抗体>
アレルギーの原因になる物質を突き止める
アトピー性皮膚炎の患者さんは、重症度や治療の効果を確認するために、血液検査でTARCという値を調べることがあります.
3-2.その他の検査
血液検査のほかに、以下の検査を行うこともあります。
<皮膚テスト>
皮膚に針を刺し、アレルギーの原因と疑われる物質を注入
【参考情報】『皮膚テストの手引き』日本アレルギー学会
https://www.jsaweb.jp/uploads/files/gl_hifutest.pdf
<食物経口負荷試験>
診療体制が整った病院で、疑わしい物質を食べてみる
【参考情報】『食物経口負荷試験とは』食物アレルギー研究会
https://www.foodallergy.jp/tebiki/shiken/
<鼻粘膜誘発テスト>
鼻の粘膜に花粉エキス入りの紙を貼り付けてみる
また、喘息の疑いがあるときは呼吸器の検査を行うなど、ほかにも症状を診ながら検査を組み合わせていきます。
4.アレルギーの治療
アレルギーによる病気は、残念ながら完治が難しいのですが、原因となる物質を避ける工夫をしながら治療を続けることで、症状が出にくい体質に改善していきます。
4-1.喘息の治療
喘息の薬物治療は、気道の炎症をコントロールして発作を防ぐ薬を中心に行います。服薬とともに、感染症の予防や生活環境の見直しで悪化を防ぎます。
4-2.アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の薬物治療は、ステロイドを配合した塗り薬を中心に、抗ヒスタミン薬などの飲み薬を組み合わせていきます。併せて、皮膚の清潔やうるおいを保つスキンケアを続けます。
4-3.食物アレルギーの治療
アレルギーの原因となる食べ物を避けることが基本ですが、原因となる食べ物を必要最低限の量だけ続けて食べて、徐々に増やしていくことで体を慣らしていく「経口免疫療法」を実施している医療機関もあります。
【参考情報】『The Current State of Oral Immunotherapy』American Academy of Allergy、Asthma&Immunology
https://www.aaaai.org/tools-for-the-public/conditions-library/allergies/the-current-state-of-oral-immunotherapy
4-4.花粉症の治療
花粉症の治療には、鼻水や鼻づまりなどの症状を一時的に抑えるために飲み薬や点鼻薬を使う「対症療法」と、原因となる花粉を少しずつ体の中に取り入れ、徐々に体を慣らしていくことで症状が出ない体質に変えていく「アレルゲン免疫療法」があります。
5.アレルギーの予防と対策
アレルギーを完全に防ぐ方法はありませんが、発症リスクを下げるためにできる対策はいくつかあります。
5-1.アレルゲンを減らす環境づくりと生活習慣の改善
まず、ハウスダストやダニ、花粉などのアレルゲンを減らす環境づくりが重要です。掃除や換気をこまめに行い、寝具を清潔に保つことで、空気中の刺激物を減らせます。
また、規則正しい生活や十分な睡眠、適度な運動は、免疫のバランスを保つ助けになります。
タバコの煙はアレルギー悪化の原因になるため、禁煙をおすすめします。
これらの対策を組み合わせることで、アレルギーの発症や悪化をある程度抑え、より過ごしやすい環境づくりが可能になります。
5-2.食物アレルギーの予防と肌のバリアを守るスキンケア
食物アレルギーに関しては、乳児期から多様な食品に少量ずつ触れることが、将来の発症を抑える可能性があるとされています。
【参考情報】『早期介入の重要性:0歳からのアレルギー対応』神奈川県立こども医療センターアレルギー科
https://kcmc.kanagawa-pho.jp/department/allergy.html
ただし、すでに強いアレルギーが疑われる場合は、専門医の指示に従う必要があります。
アトピー性皮膚炎や乾燥肌の人は、肌のバリア機能が弱くなっており、アレルゲンが体に入り込みやすい状態になっているので、スキンケアも重要です。
<保湿を徹底する>
入浴後すぐに保湿剤を塗り、肌の乾燥を防ぐことで、刺激物の侵入を抑えられます。
<刺激の少ない製品を使う>
無香料・低刺激の石けんや保湿剤を選ぶと、肌トラブルのリスクが減ります。
<肌をこすらない>
強くこする洗い方やタオルでの摩擦はバリアを壊すため、優しく扱うことが大切です。
<汗や汚れは適度に洗い流す>
清潔を保ちながら、洗いすぎないバランスが重要です。
肌の状態を整えることでアレルゲンの侵入を防ぎやすくなり、アレルギー症状の悪化予防に役立ちます。
【参考情報】『アトピー性皮膚炎を改善させるために重要なこと~ 皮膚の炎症を抑え、皮膚のバリア機能を回復させるために ~』東京都アレルギー情報navi
https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/allergy/measure/atopic_dermatitis.html
5-3.腸内環境を整えてアレルギーを防ぐ
また近年、アレルギー性疾患の発症には、腸内環境が深くかかわっていることが徐々に明らかになってきました。
腸内環境を整えるには、野菜や魚、発酵食品が豊富な昔ながらの和食を食卓に取り入れることに加え、ごはんやパン、麺類などの主食を食べ過ぎないことが大事です。
◆「アレルギー体質の人が知っておきたい、食事と腸の関係」>>
6.おわりに
アレルギーになりやすい体質を持っている人は、症状を引き起こすアレルゲンがわかったら、できるだけその物質を避けて過ごしましょう。
さらに、必要に応じて専門医の指導のもとで治療方針を整えることも大切です。
アレルゲンを避ける対策と薬の使用を組み合わせることで、症状の悪化を防ぎ、日常生活の負担を減らせます。
また、定期的に医療機関で経過を確認し、体質や季節の変化に合わせて治療を調整していくと、より安定した管理につながります。

















