喘息に市販薬は使える?選び方と注意点を解説

咳や息苦しさなどの喘息の症状が現れたとき、「とりあえず市販薬で対処できないか」と考える方は少なくありません。
また、風邪をひいたり頭痛が生じたときなどに、「喘息があるけれど、市販薬を使っても大丈夫?」と悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、喘息の人が使うことがある市販薬や注意したい成分、受診が必要な症状についてわかりやすく解説します。
1. 喘息とはどんな病気?
喘息は、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が起こる病気です。
炎症によって気道が敏感になると、ちょっとした刺激でも気道が狭くなり、咳や息苦しさ、ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音(喘鳴:ぜんめい)が繰り返し現れます。
症状は夜間から早朝にかけて強くなりやすく、季節の変わり目や風邪をきっかけに悪化することもあります。
喘息を放置すると発作が重症化するリスクがありますが、適切な治療を続けることで症状をコントロールし、日常生活を問題なく送れるケースも多くあります。
2. 喘息の人が使うことがある市販薬
喘息の方が症状を抑えるため市販薬を使う場合、主な目的は咳や痰、のどの違和感を和らげることでしょう。
ただし、喘息の症状や体質によっては合わない成分もあるため、成分表示をよく確認したうえで慎重に選ぶようにしましょう。
2-1. 咳止め薬
市販の咳止め薬に含まれる主な成分には、デキストロメトルファン、ノスカピン、チペピジンヒベンズ酸塩、ジヒドロコデインなどがあります。
特に注意が必要なのが、コデイン類を含む薬です。眠気や呼吸抑制を引き起こすことがあり、喘息症状が強い場合には慎重な使用が必要です。
【参考情報】『Codeine』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a682065.html
また、総合風邪薬には複数の成分が配合されており、喘息症状を悪化させる可能性のある解熱鎮痛成分が含まれている場合もあります。
市販薬を購入する際は、成分表示を確認し、不安がある場合は薬剤師に相談しましょう。
2-2. 去痰薬
去痰薬は、痰を出しやすくする薬です。代表的な成分には、カルボシステイン、アンブロキソール、ブロムヘキシンなどがあります。
喘息では、気道の炎症によって痰が増えることがあり、痰の絡む咳が続く場合に去痰薬が使われることがあります。
ただし、痰が急に増えた場合や、発熱・強い息苦しさを伴う場合には、気管支炎や肺炎などの呼吸器感染症が隠れている可能性もあります。
このような場合は市販薬だけで様子を見るのではなく、早めに病院を受診しましょう。
2-3. のど飴・トローチ
のど飴やトローチは、のどの乾燥や刺激感を和らげる目的で使われます。口やのどを潤すことで、咳のきっかけとなる刺激を軽減できる場合があります。
ただし、メントールやハッカ成分が強い製品は、人によっては気道への刺激となり、咳が出やすくなることがあります。
香辛料成分やアルコールを含む製品でも刺激を感じる場合があるため、違和感がある場合は使用を中止しましょう。
2-4. 漢方薬
麦門冬湯(ばくもんどうとう)や五虎湯(ごことう)は、咳に用いられることがある漢方薬です。
ただし、五虎湯をはじめ一部の漢方薬には、「麻黄(まおう)」という生薬が含まれています。麻黄には気管支を広げる作用が期待される一方で、動悸や血圧上昇、不眠などを引き起こすことがあります。
【参考情報】『Ephedra』National Institutes of Health
https://www.nccih.nih.gov/health/ephedra
特に、高血圧や心疾患のある方、ほかの風邪薬や咳止め薬を使用している方は注意が必要です。使用前に医師や薬剤師へ相談しましょう。
3. 喘息の人が注意したい市販薬
市販薬の中には、喘息症状を悪化させる可能性がある成分もあります。
3-1. NSAIDs(解熱鎮痛薬)
解熱鎮痛薬の中には、喘息症状を悪化させるものがあります。
特に、NSAIDs(エヌセイズ:非ステロイド性抗炎症薬)によって喘息発作が誘発されるタイプは、「アスピリン喘息」と呼ばれています。
市販薬では、イブプロフェン、ロキソプロフェン、アスピリンなどの成分に注意が必要です。これらは総合風邪薬や頭痛薬にも含まれていることがあるため、購入前に成分表示を確認しましょう。
一方、アセトアミノフェンは比較的使用されることが多い成分ですが、自己判断は避け、使用前に医師や薬剤師へ相談することが大切です。
【参考情報】『Acetaminophen』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a681004.html
3-2. 眠気成分による呼吸抑制のリスク
咳止め薬や風邪薬には、コデイン類や抗ヒスタミン薬など、眠気を引き起こす成分が含まれていることがあります。
これらは咳を抑える一方で、呼吸を弱める方向に働くことがあるため、喘息の症状が強いときや、夜間に呼吸が不安定な場合には注意が必要です。
3-3. 風邪薬の成分重複に注意
総合風邪薬には、咳止め・解熱鎮痛薬・抗ヒスタミン薬など、複数の成分が含まれているのが一般的です。
そのため、すでに服用している薬と成分が重複したり、知らないうちに咳止めや解熱鎮痛成分を重ねて服用してしまったりすることがあります。
特に、喘息治療薬を使用している方では、成分の重複や飲み合わせに注意が必要です。購入前には成分表示を確認し、不安がある場合は薬剤師へ相談しましょう。
【参考情報】『注意したい薬の飲み合わせ、食べ合わせ』日本OTC医薬品協会
https://www.jsmi.jp/selfmedication/use/nomiawase.html
3-4. エフェドリン配合薬の注意点
喘息の方が市販の咳止め薬や風邪薬を使用する際は、エフェドリン類を含む製品に注意が必要です。
エフェドリンには気管支を広げて呼吸を楽にする作用がありますが、その一方で、動悸や血圧上昇、手の震え、不眠などの副作用が現れることがあります。特に、高血圧や心疾患のある方、高齢の方では慎重な使用が必要です。
また、喘息治療で使用している気管支拡張薬と作用が重なることで、副作用が強く出る場合もあります。カフェインを多く含む飲料や薬との併用にも注意が必要です。
症状が続くからといって自己判断で長期間使用せず、気になる症状がある場合は医師や薬剤師に相談しましょう。
【参考情報】『Ephedrine Tablets』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/drugs/ephedrine-tablets
4. 市販薬で対応してはいけないケース
喘息発作が疑われる場合には、市販薬で対応を続けるのは危険です。
4-1. 強い息苦しさがある
呼吸が苦しい、息が苦しいと感じる場合は注意が必要です。
特に、少し動いただけで苦しい、息が吐きにくい、肩で呼吸している、呼吸のたびにゼーゼー・ヒューヒューするといった症状がある場合は、喘息の発作が悪化している可能性があります。
市販薬だけで様子を見ず、速やかに病院を受診しましょう。
◆「息苦しい・呼吸がしにくいと感じたら、呼吸器内科を受診しましょう」>>
4-2. 夜間・早朝の咳が続く
喘息は、夜間から早朝にかけて症状が悪化しやすい特徴があります。
夜中に咳で何度も目が覚める、朝方に咳が止まらないといった状態が続く場合は、気道の炎症が十分にコントロールできていないサインかもしれません。
風邪と思って市販薬だけで対応していると、症状が進行することもあるため注意が必要です。
4-3. 会話しづらい・横になれない
喘息発作が強くなると、長く話せない、横になると苦しい、座ったままでないと呼吸しづらいなど、日常の動作にも支障が出るほど呼吸が苦しくなることがあります。
このような状態は重症化のサインであり、救急受診が必要になるケースもあります。
◆「喘息発作を悪化させない応急処置と発作を減らす予防のポイント」>>
4-4. 市販薬で改善しない
咳止めや風邪薬を使っても症状が改善しない場合や、何度も繰り返す場合は、市販薬だけでは対応しきれない可能性があります。
特に、咳が数週間続く、息苦しさを伴う、症状が徐々に悪化しているといった場合は、喘息やほかの呼吸器疾患が隠れていることもあります。
自己判断で市販薬を使い続けるのではなく、呼吸器内科などで適切な診断を受けるようにしましょう。
5. 喘息治療で使われる主な処方薬
喘息では、咳などの症状を一時的に抑える治療よりも、気道の炎症を抑える治療が重要になります。
5-1. 吸入ステロイド薬
吸入ステロイド薬は、喘息治療の中心となる薬です。
喘息では気道に慢性的な炎症が起きているため、この炎症を抑えることで発作を起こりにくくします。
吸入薬は薬を直接気道へ届けられるため、飲み薬のステロイドと比べて全身への影響が出にくいのが特徴です。症状が落ち着いている時期も、継続して使用することが大切です。
5-2. 気管支拡張薬
気管支拡張薬は、発作時に使用する吸入薬として用いられ、狭くなった気道を広げて呼吸を楽にします。
また、長時間作用型の薬は、吸入ステロイド薬と組み合わせて長期管理に使用されることもあります。
ただし、気管支拡張薬だけに頼ると、気道の炎症が十分に抑えられず、喘息コントロールが悪化することがあります。自己判断で使用回数を増やさないことが大切です。
5-3. 発作治療薬と長期管理薬の違い
喘息治療では、発作時に使う薬と普段から使う薬を分けて考えることが重要です。
発作治療薬(リリーバー)は、発作が起きたときに気道を素早く広げ、息苦しさを和らげるために使います。
一方、長期管理薬(コントローラー)は、気道の炎症を抑えて発作を起こりにくくする目的で、症状の有無にかかわらず継続して使用します。
症状が落ち着いているからといって自己判断で治療を中断すると、気づかないうちに炎症が進行し、重い発作につながることがあります。
医師の指示に従って、きちんと使い続けることが大切です。
6. おわりに
喘息は気道の慢性的な炎症によって起こる病気であり、咳止めや風邪薬で根本的に改善するものではありません。市販薬は咳や痰などの症状を一時的に和らげる補助的な役割にとどまります。
また、解熱鎮痛薬や風邪薬の一部は喘息の症状を悪化させることもあるため、自己判断での使用には注意が必要です。
強い息苦しさがある、夜間や早朝の咳が続く、ゼーゼー・ヒューヒューする、市販薬を使っても改善しないといった場合は、早めに呼吸器内科などを受診しましょう。
適切な治療で気道の炎症をコントロールすることが、喘息とうまく付き合っていくための第一歩です。












