喘息発作を悪化させない応急処置と発作を減らす予防のポイント

喘息は、アレルギーなどの炎症によって気道が敏感になり、気道が狭くなることで起こります。
気道が敏感になることで、風邪をひいたり、汚れた空気を吸ったときに気管支が狭まり、呼吸が苦しくなる病気です。
夜間や早朝に発作が出やすいのが特徴です。
喘息の発作といえば、激しい咳が出て止まらなくなるイメージがあるかもしれません。しかし、軽い発作だと、息苦しいだけで咳が出ないこともあります。
また、喘息の患者さんが息苦しくなると、息を吐くたびに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という特徴のある音(喘鳴:ぜんめい)が聞こえることがありますが、息苦しくなっても喘鳴が感じられない場合もあります。
この記事では、軽い発作で息苦しくなった時の対処法と、発作を起こさないための予防法を紹介します。
目次
1.喘息の発作・3つの段階
喘息の発作は、症状の強さによって「小発作」「中発作」「大発作」の3つに分けられます。
「小発作」は、軽い喘鳴はありますが、呼吸困難はなく会話も動作も普段通り行えます。血中酸素飽和度(SpO2)は96%以上で、日常生活に大きな支障はありません。
「中発作」は、明らかな喘鳴があり、呼吸困難感もあらわれます。また、発作により会話や食事、睡眠などの動作に影響があります。苦しくて横になれず、会話が途切れがちになり、SpO2は91〜95%に低下します。
「大発作」は、喘鳴がひどく日常生活が困難な状態です。呼吸困難になり会話はできず、チアノーゼ(酸素不足により皮膚が青紫色になった状態)があらわれる場合もあります。SpO2は90%以下に低下し、動けない、話せない状態となります。大発作が起きた時は、ただちに医療機関を受診する必要があります。
【参考情報】『成人喘息 発作が起こったら…』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/attack.html
咳や喘鳴がなくても息苦しい場合は、軽めの発作を起こしていると考えて対処しましょう。
【参考情報】”What to Do When an Emergency Occurs” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/asthma/emergency/index.html
2.息苦しい時の対処法

2−1.気管支拡張薬がある場合
かかりつけ医から処方された気管支拡張薬があれば、すぐに服用してください。「これくらいの軽い症状で薬を使うなんて」とためらう必要はありません。発作が悪化する前に、迷わず吸入しましょう。
【吸入薬の正しい使い方】
吸入薬を使用する際は、以下の手順を守りましょう。
・いったん息を吐いてから吸入器をくわえます
・薬剤を放出するタイミングに合わせてゆっくりと深く息を吸い込みます
・吸入後は数秒間息を止めて、薬を気道に届けます
・ゆっくりと息を吐き出します
・吸入後は必ずうがいをして、口内への薬剤の付着を取り除きましょう
薬を使って息苦しさが治まってきたら、そのまま様子をみます。症状が治まらなかったり、悪化するなら、最初に吸入した時から20分後に、もう一度薬を使用します。
2回薬を吸入しても息苦しさがとれなかったら、また20分後に3回目の薬を使用し、それでも息苦しさが治まらない場合は病院を受診してください。発作の原因が肺炎や気管支炎などの場合は、感染症治療をしないと改善しないためです。
【参考情報】”Self-Care for Asthma — Using Your Inhaler” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/asthma/caring/index.html
2−2.気管支拡張薬がない場合
気管支拡張薬がない場合、まずは水分を補給してください。冷たい飲み物だとのどの粘膜が刺激されてしまうので、常温または温かい飲み物を摂ってください。
お茶や紅茶、コーヒーなどカフェインを含む飲み物は、交感神経を刺激することで気道を一時的に広げる作用が期待できます。
水分を補給したら、腹式呼吸をしましょう。鼻から息を吸い込み、吸い込んだ空気でお腹を大きく膨らませたら軽く息を止め、口をすぼめてゆっくりと息を吐き切ります。
【参考情報】『実践編 腹式呼吸』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/copd/effective/04.html
水分補給と腹式呼吸で痰が出やすい状態になったら、ゴホンと咳払いをして痰を吐き出します。
その後、安静にしてしばらく様子をみます。仰向けになると苦しい時は、横向きの姿勢で寝たり、椅子に座って背もたれに寄りかかって寝るなど、ラクになれる姿勢を探してみてください。
前かがみになって机やひざの上に腕を置くと、呼吸補助筋が働きやすくなり胸や肩周りがリラックスしやすくなります。
上記の応急処置を行っても、息苦しさが治まらない時や悪化していく場合は、病院を受診してください。
【参考情報】”How to Breathe When You Are Short of Breath” by MedlinePlus, U.S. National Library of Medicine
https://medlineplus.gov/ency/patientinstructions/000053.htm
3.発作が起きたときの受診の判断基準
喘息発作の症状は一人ひとり異なりますが、以下のような場合はためらわず医療機関を受診をしてください。
【受診を考えるべきタイミング】
・いつも使っている気管支拡張薬を吸入しても、呼吸の苦しさが十分に改善しない
・息苦しさがつらくて眠れない、横になると余計に苦しくなる
・歩くのがつらいほど呼吸がしんどい
・顔色が悪い、または唇の色が紫がかって見える
・息が続かず、会話が途切れてしまう
・手元に発作時の薬がなく、症状が改善しない
特に「座っていないと呼吸しづらい」「意識がぼんやりしてくる」など、いつもと明らかに違う強い症状がある場合は、できるだけ早く医療機関へ相談してください。
受診の前には、可能であれば普段の発作治療薬を使用しておくと、症状が落ち着きやすくなります。
【参考情報】『応急手当Web 気管支喘息発作』北海道医師会
http://www.hokkaido.med.or.jp/firstaid/syobyo25/contents009.htm
4.喘息の息苦しさを予防するには
喘息の治療には毎日の服薬が欠かせません。発作が起こらなくても、症状が治まったとしても、気道の炎症そのものは続いているので、自己判断で薬をやめてしまうと、何かのきっかけで再び症状が現れることがあります。
【参考情報】『Weather Can Trigger Asthma』Asthma and Allergy Foundation of America
https://www.aafa.org/weather-triggers-asthma/
ですから、発作が起こった時だけ症状を和らげる薬を使うのではなく、気道の炎症を抑えるための薬を毎日服用することが大切です。
毎日の服薬を中断してしまった人は直ちに再開し、息苦しくならないように薬で気道の炎症をコントロールしましょう。
また、タバコの煙も息苦しさを誘発する原因となるので、吸っている人は禁煙してください。新型タバコ(加熱式タバコ・電子タバコ)も吸わないようにしましょう。
本人が吸っていなくても周りに吸っている方がいらっしゃると症状はよくなりません。受動喫煙も徹底して避けましょう。
5.室内環境を整えて発作を予防する
喘息発作を予防するためには、日常的に室内環境を整えることが非常に重要です。
【室内環境を整えるポイント】
1. こまめな掃除
・掃除機は週に2〜3回以上かけましょう
・掃除機使用後は床拭きも行うと効果的です
・カーテンやソファなどの布製品も定期的に洗濯しましょう
・エアコンのフィルターは月に1回以上清掃してください
2. 寝具の管理
・布団や枕カバーは週に1回以上洗濯しましょう
・布団は天日干しや布団乾燥機でしっかり乾燥させます
・ダニやカビの発生を防ぐため、湿気対策を徹底します
◆「喘息・アレルギーを悪化させない、カビと掃除の注意点」>>
3. 湿度と温度の管理
・室内湿度は50〜60%を目安に保ちます
・冬場は加湿器を使用しますが、水タンクや内部は定期的に清掃してカビの繁殖を防ぎます
・室内外の温度差が5℃以上にならないよう温度管理をします
4. 換気
・1日に数回、短時間でも窓を開けて換気しましょう
・就寝前にも換気を行うと夜間の発作予防に効果的です
5. ペットの管理
・ペットを飼っている場合は、こまめなブラッシングと掃除を行います
・寝室にはペットを入れないようにします
【参考情報】『悪化因子の対策 室内環境を見直しましょう』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/measures/indoor.html
6.おわりに
喘息の治療は、発作が起きてから行うものではありません。発作を起こさないように日頃からの自己管理、発作のコントロールをしていくことが大切です。
喘息患者さんが息苦しさを感じたら、我慢せずに処方された気管支拡張薬を使ってください。
また、その時は息苦しさがとれても、また同じように息苦しさを感じることがあれば、早めにかかりつけの呼吸器内科医に相談しましょう。
定期的に通院して医師に症状を相談することで、早めに治療内容を調整できます。
特に季節の変わり目や体調を崩したあとなどは発作が起きやすいタイミングなので注意が必要です。
症状が落ち着いているときでも自己判断で受診をやめず、定期的な通院を続けることが発作予防につながります。










