睡眠時無呼吸症候群は、どの診療科を受診すればよいか?

睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に呼吸が止まっては再開することを繰り返す病気です。
この病気になると、夜間の睡眠が妨げられるため、日中の眠気や集中力の低下などの症状が現れます。
さらに、治療をせずに放っておくと、生活習慣病や血管・心臓・脳の病気のリスクが上がり、心筋梗塞や脳卒中で倒れてしまうこともあります。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群の症状について説明し、どのような病院や診療科を受診したらよいのかを解説します。病院選びに迷っている人は、ぜひ読んでください。
目次
1.睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気か
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に無呼吸や低呼吸になることを繰り返す病気です。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-05.html
診断には、1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数を示す「AHI(Apnea-Hypopnea Index)」が用いられます。
一般に、AHIが5回以上で自覚症状がある場合、または症状がなくても15回以上ある場合に、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
また、AHIの値によって重症度が分類され、5〜14回は軽症、15〜29回は中等症、30回以上は重症とされています。
呼吸が止まるたびに、患者さんは気づかなくても一瞬起きています。重症になると、1時間に30回以上無呼吸に陥るため、夜中に何度も目が覚めて熟睡できず、睡眠不足になります。
その結果、昼間の眠気や集中力の低下、寝起きの不快感や頭痛などの症状が現れます。
呼吸が妨げられることで、激しいいびきが繰り返され、寝室をともにする家族やパートナーの安眠が妨げられ、人間関係に支障をきたすこともあります。
この病気による居眠り運転で、交通事故や電車の運転事故が発生し、多数の犠牲者が出たことも、大きな社会問題となりました。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群(SAS)による眠気に起因した自動車事故例の検討』馬塲美年子、一杉正仁、相磯貞和
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcts/13/2/13_18/_pdf
2.なぜ治療が必要なのか
昼間の眠気や集中力の低下を感じても、「ストレス」「過労」「年のせい」だと思い、病気とは考えない人も多いでしょう。
しかし、この病気の恐ろしさは、よくある症状の裏で、命にかかわる合併症のリスクが進行しているところです。
睡眠中に呼吸が妨げられると、寝ている間に全身が低酸素状態となります。
そして、毎晩のように低酸素状態を繰り返すことで、心臓や脳、血管に大きな負担がかかってしまうため、心血管疾患や生活習慣病のリスクが高くなります。
そのため、治療の目的は、日中の眠気や激しいいびきなどの悩みを改善すると同時に、心筋梗塞や脳卒中などの重い合併症を防ぐことにあります。
治療により睡眠中の低酸素状態が改善されると、心血管疾患のリスクが健康な人と変わらないくらいまで下がります。
【参考情報】『Why Sleep Apnea Raises Your Risk of Sudden Cardiac Death』Cleveland Clinic
https://health.clevelandclinic.org/why-sleep-apnea-raises-your-risk-of-sudden-cardiac-death/
3.何科を受診すればいいのか
睡眠時無呼吸症候群の診断には、専用の装置を用いた検査が必要となります。病院を選ぶ際には、ホームページなどで検査ができるかどうかを確認しておきましょう。
3-1.診療科の選び方と判断ポイント
検査や治療ができるのは、主に、呼吸器内科、耳鼻咽喉科、循環器内科がある病院です。
病院選びの際は、以下のポイントを参考にしてください。
<呼吸器内科【こんな方におすすめ】>
・日中の強い眠気や集中力の低下がある
・高血圧や糖尿病などの生活習慣病がある
・肥満がある
・検査から治療まで一貫して診てほしい
<耳鼻咽喉科【こんな方におすすめ】>
・慢性的な鼻づまりがある
・アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎がある
・扁桃腺が大きいと言われたことがある
・小児で大きないびきをかく
<循環器内科【こんな方におすすめ】>
・高血圧の治療中だが血圧が安定しない
・心不全の治療中だが症状があまり改善しない
病院選びに迷って決められないときは、呼吸器内科、あるいは呼吸器専門医のいる病院を受診しましょう。
【参考情報】『専門医検索』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/search/specialist/index.php
また、お近くの内科やかかりつけ医に相談し、専門の医療機関を紹介してもらうのも良い方法です。
3-1.呼吸器内科の特徴
呼吸器内科は、睡眠時無呼吸症候群の診療において中心的な役割を担う診療科です。
内科の中でも、肺や気管支など呼吸に関する臓器や器官を扱う呼吸器内科だと、検査や治療の実績が豊富であることが多いでしょう。
睡眠中の呼吸状態を専門的に評価し、簡易検査から精密検査(PSG検査)、CPAP治療などの標準的な治療まで一貫して受けることができます。
特に、中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群の方や、高血圧・糖尿病などの生活習慣病を合併している方、呼吸器疾患(喘息やCOPDなど)をお持ちの方には、呼吸器内科での診療が最適です。
気道の閉塞による呼吸の問題を総合的に診断・治療できる専門性の高さ、呼吸器内科のが強みです。
◆「呼吸器内科で睡眠時無呼吸症候群の検査と治療ができます」>>
3-2.耳鼻咽喉科の特徴
耳鼻咽喉科では、扁桃肥大やアデノイド肥大、鼻中隔弯曲症、鼻茸(鼻ポリープ)など、気道を狭くする構造的な異常を専門的に評価・治療することができます。
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などで慢性的に鼻づまりがある場合は、治療により鼻の通りが改善することで、睡眠中の呼吸がしやすくなり、症状の軽減につながることがあります。
耳鼻咽喉科の診察では、内視鏡検査などにより鼻や喉の状態を詳しく観察し、場合によっては手術の適応を検討します。
特に小児の睡眠時無呼吸症候群では、扁桃やアデノイドの肥大が主な原因となることが多く、摘出手術によって大きく改善するケースが少なくありません。
【参考情報】『Management of Persistent, Post-adenotonsillectomy Obstructive Sleep Apnea in Children: An Official American Thoracic Society Clinical Practice Guideline』National Library of Medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10840779/
3-3.循環器内科の特徴
循環器内科は、心臓や血管の病気を専門に扱います。
睡眠時無呼吸症候群は高血圧や心疾患と密接に関連しており、特に治療抵抗性高血圧の方では、半数以上に合併していると報告されています。
【参考情報】『治療抵抗性高血圧症の診断と治療最前線』J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/3/104_496/_pdf
循環器内科に通院中で、いびきや日中の眠気がある場合は、まずは主治医に相談してください。
まれですが、睡眠時無呼吸症候群は心臓や神経の病気が背景となって発症することもあります。
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、呼吸器内科などと連携して検査・治療が行われます。
4.睡眠時無呼吸症候群の検査と治療
4-1.睡眠時無呼吸症候群の検査
睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合、まずは自宅で小型の専用機器を用いて簡易検査を行います。
簡易検査では、指先や鼻、胸などにセンサーを装着して、睡眠中の呼吸状態や血中酸素飽和度(SpO₂)、いびきの有無などを測定します。
この検査で異常が疑われた場合や、より詳しい評価が必要と判断された場合には、医療機関に一泊して精密検査(ポリソムノグラフィー:PSG)を行います。 ※当院では自宅での精密検査も可能です
精密検査では、呼吸の状態に加えて、脳波や眼球運動、筋電図、心電図なども同時に記録し、睡眠の質や無呼吸の重症度(AHI)を正確に評価します。
4-2.睡眠時無呼吸症候群の治療
検査の結果、睡眠時無呼吸症候群と確定した場合は、重症度や原因に応じて治療方針が決まります。
代表的な治療法はCPAP(シーパップ)で、鼻や口に装着したマスクから一定の圧力で空気を送り込み、気道の閉塞を防ぐことで無呼吸を改善します。
軽症の場合やCPAPが使用できない場合には、マウスピース(口腔内装置)による治療が選択されることもあります。
さらに、扁桃肥大や鼻中隔弯曲など明らかな構造的な原因がある場合には、耳鼻咽喉科での手術が検討されることもあります。
5.おわりに
睡眠時無呼吸症候群は、心筋梗塞や脳梗塞などの恐ろしい病気を引き起こす危険がある病気です。
「たかがいびきくらいで」とか「これくらいのことで病院を受診するなんて」と思わずに、昼間の眠気や倦怠感が続いている人は、迷わず病院を受診してください。
早めに治療を開始すれば、命にかかわる病気を防ぐことができます。また、睡眠の質や量が改善されるので、「目覚めがよくなった」「以前より疲れにくくなった」と感じる人も多いです。










