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喘息は完治する?しない?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年09月12日
喘息完治トップ

喘息は、高血圧や糖尿病と同じような慢性疾患に分類される病気です。

慢性疾患とは、治療や経過に長い時間がかかり、治療を続けながら徐々に寛解を目指すような病気です。

そのため、特効薬を使用すれば数日で劇的に改善するインフルエンザなどとは異なり、喘息の治療には長い時間が必要です。

そこでこの記事では、喘息治療の基本をご紹介しながら、喘息は完治することがあるのか?という疑問についてお伝えしていきます。

1.喘息は完治する?

喘息完治家族

残念ながら、喘息は今の医学で完治させることは不可能な病気です。

ただし、適切な薬物治療と自己コントロールを継続することができれば、健康な人と変わらない生活を送ることができます。

そのため、喘息の治療目標は「コントロール状態の維持」です。

日本アレルギー学会の「喘息予防・管理ガイドライン2021」では、喘息治療の目的を次の様に定めています。

1・症状のコントロール
喘息の症状(咳、息切れ、喘鳴など)が日常生活で現れないことを目指します。これにより、患者さんが喘息による不安なく生活できる状態を保つことが治療の基本的な目的です。

2.喘息発作の予防
発作とは急激に症状が悪化することです。適切な治療によって、発作を予防し、急激な悪化を防ぐことが重要です。

3.肺機能の維持
喘息が長期にわたって放置されると、肺の機能が低下する恐れがあります。治療を通じて、肺機能が正常またはほぼ正常に保たれることが目標です。

4.健康な生活の質(QOL)の維持
喘息があっても、生活の質が低下しないように治療を行うことが目的です。患者さんが日常生活や仕事、スポーツなどを快適に行えることが重視されます。

5.薬物治療の副作用の最小化
喘息治療に使用する薬は効果的ですが、副作用が出ることもあります。治療の目的は、副作用を最小限に抑え、必要な効果を得ることです。

6.全体的な治療の安全性の確保
治療が安全に行われるように、適切なモニタリングや調整を行います。特に、ステロイド薬を使用する場合は、その影響を管理し、長期的な安全性を重視します。

7.合併症の予防
喘息が進行すると、肺炎やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの合併症を引き起こす可能性があります。これらの予防も治療の目的の一部です。

これらの治療目標を達成することで、喘息患者さんは日常生活をより快適に過ごし、健康を維持することができます。

また、小児喘息の場合、症状の程度によっては寛解(ほとんど症状がでない状態)を目指すことも可能です。

いずれにしても、信頼できる医療機関に定期通院して自己コントロールを続けることができれば、必要以上に恐れることはありません。

【参考情報】『喘息予防・管理ガイドライン2021』日本アレルギー学会
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/72/3/72_214/_article/-char/ja

◆「喘息の初期症状:早期発見のため知っておきたい兆候」>>

2.小児喘息と成人喘息の違い

喘息総患者数グラフ

【参考情報】『統計調査』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/toukei/index.html

小児喘息の患者さんの50%は、2歳以下で発症していると言われています。中には、生後2~3か月で発症するお子さんもいます。

アレルギーの遺伝要素が関与していることも多く、両親共にアレルギー体質である場合、そうでない場合よりも高い確率で発症することがわかっています。
その他、家族に喫煙者がいる場合も発症する確率が高くなるとされています。

しかし、小児喘息の5~6割程度は、肺の成長とともに症状も治まり、寛解を目指すことが可能です。

厚生労働省の報告によると、小児喘息は90%以上がアトピー型であり、アレルゲン対策や薬物治療の効果によって、成人喘息に比べて寛解(薬なし・発作なし状態)に導くことが可能とされています。

ただし、重症の場合は小児喘息でも、寛解率が極めて低いことも報告されており、適切な治療の継続が重要です。

◆「アレルギーの原因」について詳しく>>

◆「小児喘息」について詳しく>>

一方、成人喘息は、小児喘息が寛解することなく大人まで持ち越した方だけでなく、過労やストレス、空気汚染などの生活環境が原因となって発症する場合も多くみられるため、アレルギー体質でない人でもかかりうる病気です。

このように、同じ喘息でも、小児喘息と成人喘息では原因や経過の点で違いがみられます。

◆「喘息の症状について」>>

◆「喘息のタイプ~原因別・年齢別」>>

【参考情報】『気管支喘息』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-06.pdf

3.喘息治療でやるべきことは?

喘息は治療が長期化する慢性疾患ではありますが、適切な治療で気道の炎症を抑えて、アレルゲンを遠ざけるなど生活環境を改善することで、発作が起きない状態を保ち、病気がない時と変わらない生活を送れるようになります。

喘息の最大の目標は「喘息発作が起きない日常を確保すること」であり、そのために薬物治療や生活指導などを組み合わせて、総合的な治療を行っていきます。

◆「喘息と診断されたら知っておきたいポイントまとめ」>>

3−1.喘息は長期的な治療が重要

小児喘息

喘息の治療は風邪などとは異なり、症状が無くなったら終わり、というわけにはいきません。症状の有無にかかわらず、毎日服薬を続ける必要があります。
 
喘息治療の重要な役割を担うのが吸入ステロイド薬であり、この吸入ステロイド薬を毎日継続することがとても重要になります。

喘息患者さんの気道では、症状がないときでも炎症が起きています。
環境再生保全機構によると、喘息の症状は気道の炎症が原因で起こるため、症状がない時でも気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬などの長期管理薬による治療を継続することが重要とされています。

発作治療薬だけでなく、炎症をコントロールする長期管理薬を使用することで、発作を予防し症状のない状態を維持できます。

◆「吸入ステロイド薬の副作用は?」>>

症状がないと、つい薬を使うのを忘れてしまうという人が多いのですが、喘息治療の目標は「症状がない状態を継続すること」です。たとえ症状がなくても、薬を続ける必要があるということを忘れてはいけません。

◆「喘息治療のゴールと治療法」>>

【参考情報】『治療 ぜん息の薬』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/medicine.html

3−2.喘息患者が行うべき毎日の自己管理

喘息完治パンチ

喘息は日々の自己管理が非常に重要です。

生活環境からアレルゲン(アレルギーを起こす可能性がある物質)を遠ざけるのはもちろん、自分にとってのアレルギー物質をしっかりと把握し、外出先でもアレルゲンに触れないように注意して生活する必要があります。

喘息は、風邪やインフルエンザのような呼吸器感染症をきっかけに悪化することも少なくありません。

風邪をひかないように心がけると同時に、風邪をひいたときの対処方法を事前に主治医と相談しておくことが大切です。

市販の風邪薬や咳止め薬の中には、喘息を悪化させる可能性がある成分が含まれていることもあるため、購入前に主治医や薬剤師に相談すると安心です。

◆「喘息の人が「やってはいけない」ことと注意点をまとめました」>>

喘息発作は、気候が不安定な時期に起こりやすい傾向があります。

季節の変わり目や寒暖差が激しい時期には、体調を崩しやすくなりますので、十分注意して生活するようにしましょう。

また、治療日誌をつけることで、体調の変化や薬の使用状況を記録し、喘息のコントロール状態を把握することができます。

記録した治療日誌は診察時に持参し、医師に症状の変化を詳しく伝えることで、より適切な治療を受けることができます。

【参考情報】『Can the Weather Affect a Person’s Asthma?』Nemours KidsHealth
https://kidshealth.org/en/teens/weather-asthma.html#:~:text=Yes.,can%20trigger%20a%20flare%2Dup.

◆「喘息の方におすすめのスポーツと、運動時の発作を予防する対処法」>>

◆「季節の変化に注意して喘息発作を予防!」>>

◆「喘息発作を起こさないための5つの習慣」>>

4.おわりに


喘息患者さんにとって、環境が自分の体調に与える影響は非常に大きいです。

しかし、見方を変えれば、日々の生活を改善することで喘息をコントロールすることができるということでもあります。

適切な治療を受けるとともに、毎日の生活習慣を見直して、発作のない暮らしを目指しましょう。

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