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大人の喘息の原因・症状・治療について呼吸器内科医が解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年04月10日

喘息は子どもの病気というイメージが強いですが、大人の喘息患者のうち約7〜8割は、成人後に初めて発症した人たちです。

大人になってから喘息になっても、原因を正しく理解して治療を続ければ、症状をコントロールしながら普通の生活を送ることは十分可能です。

しかし、放置すると気道の炎症が慢性化し、重症化するリスクもあります。

この記事では、大人の喘息の原因から、症状のチェックポイント、受診の目安まで詳しく解説します。

1. 大人の喘息の特徴


喘息は、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が起こり、気道が狭くなることで、咳や息苦しさ、喘鳴(ぜんめい:ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音)を繰り返す病気です。

◆「喘鳴」とは?>>

子どもの喘息は、主にダニやハウスダスト、花粉などのアレルギーが原因で発症します。

一方で、大人の喘息は、子どもと同様にアレルギーが原因となることもありますが、アレルゲンが特定できない人も半数近くにのぼります。

子どもは喘息になっても、成長とともに気道が広がり、免疫の反応も変化するため、思春期以降に症状が軽くなる、あるいは治まるケースも少なくありません。

しかし、大人の喘息が自然に治ることはまれで、放置すると炎症が慢性化し、呼吸機能の低下につながる可能性があります。

【参考情報】『Age-specific incidence of allergic and non-allergic asthma』Springer Nature Link
https://link.springer.com/article/10.1186/s12890-019-1040-2

2. 大人の喘息の主な原因


大人の喘息は、ひとつの原因だけで発症するとは限りません。

体質に加えて、生活環境や習慣、加齢などが複雑に絡み合って発症・悪化します。

2-1.アレルギー

ダニやハウスダスト、花粉、ペットの毛やフケなどは、喘息を悪化させる代表的な原因です。

ダニは、特に寝具に多く潜んでいます。そのため、「朝起きると咳が出る」「寝室にいると症状が強くなる」といった場合は注意が必要です。

花粉がアレルゲンとなる場合は、春や秋など特定の季節に症状が強くなる傾向があります。鼻水や目のかゆみを伴うこともあり、花粉症とあわせて喘息の症状が悪化する人もいます。

また、犬や猫などのペットの毛やフケが刺激となることもあります。「ペットを飼い始めてから咳が出る」といった場合は関連が疑われます。

◆「喘息に関する主なアレルゲンと避ける・減らす対策」>>

2-2.呼吸器感染症

風邪や気管支炎、肺炎などにかかったあと、治ったと思ったのに咳だけが続くことがあります。これは、感染によって傷ついた気道に炎症が残り、粘膜が非常に敏感な状態になっているためです。

通常は時間とともに落ち着きますが、激しい咳そのものが気道をさらに傷つけ、その刺激でまた咳が出るという「咳が咳を呼ぶ」悪循環に陥ることがあります。

人によってはこの炎症が長引き、そのまま慢性的な状態へと変わって、大人の喘息の発症につながることがあります。

【参考情報】『Why are you coughing so much?』Mayo Clinic
https://www.mayoclinichealthsystem.org/hometown-health/speaking-of-health/why-are-you-coughing-so-much

2-3.喫煙・受動喫煙

たばこの煙には多くの有害物質が含まれており、吸い込むたびに気道の内側が傷つき、炎症が起きやすい状態になります。

これは喫煙者本人だけの問題ではありません。家庭や職場などで他の人が吸った煙を日常的に吸い込む受動喫煙でも、気道へのダメージは少しずつ蓄積されていきます。本人に自覚がなくても、長期間にわたって煙にさらされ続けることで、気道の炎症が慢性化するリスクがあります。

長年喫煙を続けている方では、気道の状態がすでに悪化していることも多く、風邪や肺炎などの感染症をきっかけに喘息の症状がはっきり現れるケースもあります。

また、喘息と同じ呼吸器疾患であるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を合併している場合もあり、その場合は息苦しさや咳がより強く出ることがあります。

【参考情報】『Asthma, COPD, and Asthma-COPD Overlap Syndrome』GOLD COPD
https://goldcopd.org/asthma-copd-asthma-copd-overlap-syndrome/

◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>

2-4.ストレス・過労

強いストレスや睡眠不足、過労が続くと、自律神経のバランスが乱れ、気道が収縮しやすい状態になります。

自律神経は気道の広さを調整する働きを持っているため、そのバランスが崩れると、わずかな刺激でも息苦しさや咳が出やすくなります。

仕事が特に忙しい時期や、生活リズムが崩れているときに症状が悪化する場合は、こうした要因が関わっている可能性があります。

◆「ストレスが喘息に及ぼす影響とは?」>>

2-5.肥満

体重が増えると、胸やお腹まわりについた脂肪が肺の広がりを妨げ、呼吸が浅くなります。肺が十分に膨らまない状態が続くと、気道に負担がかかりやすくなります。

【参考情報】『Asthma and obesity: mechanisms and clinical implications』Nature
https://link.springer.com/article/10.1186/s40733-015-0001-7

さらに、脂肪組織からは炎症を引き起こす物質が分泌されており、これが気道の粘膜を過敏にして、咳や息苦しさといった症状を起こりやすくします。

【参考情報】『The association between body mass index, abdominal fatness, and weight change and the risk of adult asthma: a systematic review and meta-analysis of cohort studies』Nature
https://www.nature.com/articles/s41598-023-31373-6

◆「喘息が肥満で発症・悪化する危険性」>>

3. 大人の喘息の初期サイン


大人の喘息は、「なんとなく咳が続く」「少し動くと息が切れる」といった軽い症状から始まることもよくあります。

そのため、疲れや風邪の後遺症と思い込んで放置してしまうケースが少なくありません。見逃しやすい初期サインを確認しておきましょう。

3-1.咳が長引く

目安として、2週間以上咳が続く場合は、単なる風邪ではない可能性があります。

特に、「乾いた咳が続く」「夜間や明け方に咳が強くなる」といった場合は、喘息を疑う必要があります。

また、以下のような場合も、気道が敏感になっているサインです。

 ・季節の変わり目に咳が出る

 ・冷たい空気を吸うと咳が出る

 ・会話や笑ったあとに咳き込む

 ・運動すると咳が出る

3-2.夜間・早朝の息苦しさ

喘息の症状は、夜から明け方にかけて強くなりやすい特徴があります。日中はほとんど気にならなくても、「横になると咳が出る」「夜中に息苦しさで目が覚める」といった場合は、喘息のサインである可能性があります。

夜間に悪化しやすい理由のひとつは、体内リズムの影響です。明け方にかけて気道は自然と狭くなりやすく、炎症も強まりやすい状態になります。また、横になると痰が気道にたまりやすくなるため、これも症状を悪化させる一因となります。

加えて、寝室に潜むダニやハウスダスト、夜間の冷たい空気なども気道への刺激になります。睡眠中は無意識のため軽い発作に気づきにくく、「なんとなく眠りが浅い」「朝起きると疲れている」という形で睡眠の質が下がっていることもあります。

3-3.風邪の後に悪化しやすい

風邪をひくたびに咳が長引く場合も、喘息のサインである可能性があります。

健康な気道であれば、風邪が治れば咳も自然とおさまりますが、喘息の人の気道はもともと炎症を起こしやすい状態にあるため、感染をきっかけにその炎症がさらに強まり、症状が表面化することがあります。

「風邪は治ったはずなのに、咳だけが2〜3週間以上続く」という経験が繰り返されている場合は、風邪そのものではなく、喘息が咳の原因となっている可能性があります。

◆「風邪を引いた後に咳だけ残る原因と考えられる病気」>>

4. 大人の喘息セルフチェック


大人の喘息は、症状が軽い段階では自覚しにくく、受診が遅れがちです。

次のチェックリストに複数当てはまる場合、喘息の可能性があります。


<チェックリスト>

 ✅ 夜間や明け方に咳が出たり、息苦しくなったりする

 ✅ 横になると咳が強くなることがある

 ✅ 運動をすると咳や息切れが出やすい

 ✅ 季節の変わり目や花粉の時期に症状が悪化する

 ✅ 冷たい空気や煙、においで咳が出る

 ✅ 風邪をひくと、咳だけが長引く

 ✅ ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音を感じることがある

 ✅ 市販の咳止め薬を使っても改善しない


これらの項目に2~3項目以上当てはまる場合は、「大人の喘息」を疑う目安になります。

5. 大人の喘息は何科を受診すべきか


大人の喘息の診断・治療は、呼吸器内科が基本の窓口となります。呼吸機能検査や画像検査などを通じて、喘息かどうかをしっかり評価したうえで、症状に合った治療を進めます。

アトピー性皮膚炎など他のアレルギー疾患を合併している場合は、アレルギー科での診療が有効なこともあります。

ただし、大人の喘息ではアレルギー以外の要因が絡んでいるケースも多く、総合的な呼吸器の評価が必要になることも少なくありません。

迷った場合は、まず呼吸器内科を受診し、必要に応じて他科と連携してもらうのがスムーズです。

◆「呼吸器内科とはどんなところ?」>>

6. 大人の喘息治療で使われる薬


喘息の治療では、「気道の炎症を抑える薬」と「気道を広げる薬」を組み合わせて使うのが基本です。

<吸入ステロイド薬>
気道の慢性的な炎症を抑え、発作を起こりにくくする薬です。喘息治療の中心となるもので、症状がないときも継続して使用することが重要です。

「ステロイド」と聞くと副作用を心配する方もいますが、吸入薬は患部に直接届く仕組みのため、内服薬と比べて全身への影響が少なく、適切な量を守って使用すれば安全性は高いとされています。

◆「吸入ステロイド薬の副作用は?」>>

<長時間作用型β2刺激薬>
気道まわりの筋肉をゆるめ、空気の通りをよくする薬です。吸入ステロイド薬と組み合わせて使用されることがあります。

<配合剤>
吸入ステロイド薬と長時間作用型β2刺激薬を1つにまとめた吸入薬です。1回の吸入で炎症を抑える効果と気道を広げる効果の両方が得られるため、現在の喘息治療ではこのタイプが主流となっています。

<短時間作用型β2刺激薬>
急な息苦しさや発作が起きたときに使う即効性のある薬です。気道を速やかに広げて症状をやわらげます。

7. 大人の喘息は治る?完治とコントロールの考え方


「大人の喘息は治るのか?」という質問をよくいただきます。ここで重要なのは、「治る」の意味をどう捉えるかです。

一般的に「完治」とは、病気が完全になくなり、治療をやめても再発しない状態を指します。

しかし大人の喘息は、気道に慢性的な炎症が起きやすい体質が根本にあるため、その体質そのものをなくすという意味での完治は、現時点では難しいとされています。

◆「気道の炎症」についてくわしく>>

ただし、「完治できない=ずっとつらい症状が続く」というわけではありません。適切な治療を継続することで、発作が起きず日常生活に支障がない状態を長期間維持することは十分可能です。

これを医療の現場では「良好なコントロール状態」と呼びます。吸入薬を中心とした治療を続けることで、症状がほとんどない状態を保ちながら、運動や仕事を問題なく行えている方も多くいます。

しかし、つらい症状を我慢して治療を先延ばしにすると、気道の炎症が重症化し、治療が難しくなるリスクがあります。

◆「喘息治療のゴール」について>>

8. おわりに

現在の喘息治療は大きく進歩しており、多くの患者さんが発作のない生活を送っています。定期的に受診し、症状に応じて治療を調整していれば、日常生活や仕事、運動を含めて制限なく過ごせることが一般的です。適切な管理が続いている限り、寿命に大きな影響を与える病気ではありません。

一方で、治療を中断したり、発作を繰り返している状態を放置したりすると、重症化のリスクが高まります。重い発作は命に関わることもあり、慢性的な炎症が続くことで肺機能の低下を招く可能性もあります。

大人の喘息は「放置すると悪化しやすいが、きちんと治療を続ければ安定させられる病気」です。長期的な管理を前提に、医師と連携しながら向き合っていくことが重要です。

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