子どもの花粉症~何歳から?風邪との違い、家庭でできる対策、受診の目安

春が近づいてくると、「子どもがしょっちゅう鼻をすすっている」「目をこすっている」といった連絡が増え始めます。
✅ 熱はないのに、透明で水のような鼻水が続く
✅ 外で遊んだ日や風が強い日に症状が悪化する
✅ 夜は鼻づまりで眠りが浅くなる
子どもは不快感を言葉にしづらいので、何が原因なのかわかりにくいのですが、毎年だいたい同じ時期に似たような不調が長く続くなら、花粉症を疑って良いタイミングです。
目次
1. 花粉症の仕組みと背景
まずは、花粉症の仕組みと患者が増えている背景を理解しておきましょう。
1-1. 「感作」という準備段階とは?
花粉症は、体が花粉に反応する準備を整える「感作(かんさ)」という段階を経て発症します。感作とは、体の免疫が花粉などの異物を「敵」として覚えてしまうことです。
最初に花粉を吸い込んだとき、すぐには症状が出ませんが、体の中では「次に来たら攻撃しよう」という準備が始まります。これが感作の段階です。その後、再び花粉が入ってくると、免疫が過剰に反応してくしゃみや鼻水などの症状を起こします。
【参考情報】『How Do Pollen Allergens Sensitize?』National Center for Biotechnology Information
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9245541/
感作が進むと、花粉が飛ぶ季節に同じ刺激を繰り返し受けることで、症状が出やすくなります。そのため、子どもの花粉症がはっきり現れるのは3〜5歳ごろが多いとされています。ただし、1〜2歳でも、季節に合わせて鼻水やくしゃみを繰り返す子はいます。
特に、家族に花粉症や喘息、アトピー皮膚炎などのアレルギー性疾患がある場合は注意が必要です。年齢だけで判断せず、症状が「いつから・どのくらい続いているか・毎年同じ時期か」を観察しましょう。
1-2. 花粉症が増えている理由
環境省が実施した全国調査によると、スギ花粉症の有病率は1998年の19.6%から、2008年には29.8%、2019年には42.5%へと増加しており、約10年ごとに10%以上の増加が見られます。
【参考情報】『花粉症環境保健マニュアル2022』環境省
https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/2022_full.pdf
増加の背景には、地球温暖化や大気汚染に加え、住宅の気密化で花粉が室内にとどまりやすくなったことや、生活習慣の変化による睡眠不足で体のリズムが乱れることなどが影響していると考えられています。
2. 風邪と花粉症の違い
この章では、風邪と花粉症の見分け方と、花粉症の可能性を示すサインを紹介します。
2-1. 風邪なら1週間ほどで治る
風邪はウイルスによる感染症のため、多くは数日から1週間ほどで回復します。発熱や全身のだるさ、のどの痛みが出やすいのが特徴です。
一方、花粉症では熱はほとんど出ず、透明でさらさらした鼻水が長く続きます。朝起きたときや外出後に症状が強くなり、夜は鼻づまりで眠りが浅くなるといった日内変動もよく見られます。
さらに大きな違いは「毎年くり返す」ことです。毎年同じ季節に同じような不調が続く場合、風邪などの感染症ではなく、アレルギーの可能性が高いと考えられます。
また、鼻水がのどに流れ込む「後鼻漏(こうびろう)」があると、横になると咳が出やすくなり、夜間や明け方の咳き込みで睡眠不足になることもあります。
2-2. 花粉症を疑うサイン
次のような特徴が複数あてはまる場合は、花粉症の可能性があります。
・熱はないか、あっても微熱程度
・透明でさらさらした鼻水が続く
・毎年同じ季節に症状が長く続く
・朝、外出後、風の強い日に悪化しやすい
・夜の鼻づまりやいびきで眠りが浅い
・目のかゆみや充血があり、頻繁にこすってしまう
こうしたサインが見られるときは、生活環境の見直しを行いながら、受診のタイミングを検討しましょう。
◆「花粉症の症状~似ている病気や他のアレルギーとの違い」>>
3. 生活への影響
花粉症の症状が続くと、子どもも保護者も生活のリズムが乱れ、ストレスが増していきます。
3-1. 鼻づまりが子どもの生活に及ぼす影響
鼻づまりは軽い不調と思われがちですが、子どもの日常には想像以上の影響を及ぼします。
まずは睡眠。鼻が詰まると、就寝中に口呼吸になって何度も目が覚め、朝の寝起きが悪くなりがちです。
睡眠不足で体力が回復しないと、朝の支度に時間がかかり、園や学校では集中力が続かず、音読や体育で息が上がりやすくなります。
家族への負担も少なくありません。ティッシュを使う量や洗濯の量が増え、子どもの機嫌に振り回される——そんな小さなストレスが積み重なると、子どもだけではなく、親も疲れてしまいます。
3-2. 後鼻漏が引き起こす夜の咳
夜、布団に入ると咳が出やすくなる——このような相談はよくあります。原因の一つに、鼻水がのどへ流れ込む「後鼻漏(こうびろう)」があります。
後鼻漏では、横になると鼻水が喉にたまりやすくなり、刺激で咳き込みが増え、明け方にかけて悪化することもあります。
3-3. 花粉で喘息が悪化
喘息のお子さんは、花粉の刺激で咳が悪化することもあります。
鼻と気道はひとつにつながっているので、どちらかでアレルギー反応が起こると、もう一方にも影響が及び、両方に症状が出ることはよくあります。
4. 受診の目安と診療科の選び方
この章では、受診のタイミングや診療科の選び方、受診にあたっての準備を解説します。
4-1. 受診の目安
花粉症が疑われても、すぐに病院へ行くべきか迷うかもしれません。しかし、判断のポイントはシンプルで「家庭での工夫だけで生活の不便が解消できているかどうか」です。
例えば、「夜の鼻づまりや咳で眠れず翌朝の機嫌が悪い」「登園・登校がつらく学習や活動に支障がある」——こうした場合は受診のサインと考えて差し支えありません。
もう一つの目安は、症状の時期性と持続性です。「毎年同じ季節に出る」「二週間以上続く」場合は、自然に任せるよりも早めに専門家の診察を受けたほうが、子どもも家族も負担を軽くできます。
4-2. どの診療科へ行けばよい?
診療科の選び方は、「いちばん困っていること」を基準にすると迷いません。
<小児科>
発熱や感染症との区別、全身状態の確認を含めた「入口」に適しています。
<耳鼻いんこう科>
鼻・のど・耳の細かい所見や局所処置が可能です。
<アレルギー科>
検査や長期管理の設計、複数アレルギーの総合評価を行います。
<呼吸器内科>
鼻だけでなく、夜間の咳き込みなど気道全体の不調が目立つ場合に適しています。後鼻漏や喘息の傾向も同時に診ることができます。
4-3. 受診前にメモしておくと役に立つこと
・いつから、どの時間帯に強いか(朝/夜/外遊び後)
・家族のアレルギー歴(花粉症・喘息・アトピーなど)
・家での対策とその効果(着替え、室内干し、入浴前後の変化など)
この三点があるだけで、診察の精度が上がり、無理のないプランに近づきます。
5. 家庭でできる対策
家での工夫は、少しずつの積み重ねが大切です。
完璧を目指す必要はありません。家族の生活に組み込みやすいものから始め、手応えのある対策を残していきましょう。
5-1. 帰宅動線を整える
上着は玄関で軽くはらい、可能であればそこで部屋着に着替えましょう。次に洗面所で顔を洗い、目の周りを清潔に保つだけでも、家の中に入る花粉の量は大きく減ります。
外出時は帽子をかぶると髪への花粉の付着を減らせ、帰宅後の手入れも簡単になります。
マスクは顔に合うサイズを選び、お子さんが嫌がる場合は、短時間から練習すると慣れやすいです。
5-2. 室内に花粉を溜め込まない
花粉の多い日は洗濯物を室内干しにし、床は水拭きで細かな花粉を取り除きます。
空気清浄機を使う場合は置き場所と風の通りが重要で、吸い込み口の前を塞がないだけでも効果が変わります。
5-3. 眠りを守る夜のルーティン
入浴で鼻の通りが整った直後に歯磨き・就寝する習慣を作りましょう。
枕を少し高くして呼吸を楽にし、就寝時刻を少し早めるのも有効です。
鼻づまりが強い日は、寝室の換気や寝具の清潔さも見直しましょう。
「よく眠れたか」は翌日の元気を左右する指標です。この点に家庭のエネルギーを集中させると、春の過ごし方が大きく変わります。
6. 治療の考え方—土台の上に必要最小限の医療を
治療は、まず家庭での対策という土台を整えたうえで、医師が提案する必要最小限の処置を少しずつ重ねていくイメージです。
年齢や体重、生活リズムに合わせて、過不足なく調整していきます。
6-1. シーズン前の準備も選択肢
毎年つらくなる時期が分かっている場合は、症状が出る少し前に医師に相談するのが効果的です。
花粉飛散前や症状が軽いうちから抗ヒスタミン薬や点鼻薬を使うことで、症状がピークに達するのを抑えやすくなります。
5歳以上のお子さんで、スギがアレルゲンの花粉症だとわかっていれば、シダキュアを使った舌下免疫療法も有効な選択肢です。
シダキュアはスギ花粉に対するアレルギー体質そのものを改善する薬で、毎日の服用を続けることで、症状の軽減だけでなく、将来的な花粉症の重症化を防ぐ効果も期待できます。
6-2. 自己判断の落とし穴
自己判断で薬の開始や中断を繰り返すと、効果が分かりにくくなります。
特に子どもは成長が早いため、「去年と同じで大丈夫」とは限りません。良かった点や困った点をシーズン後に振り返り、翌年に活かすサイクルを家族の習慣にすると安心です。
7.子どもの花粉症に関するよくある質問
Q1. 子どもがマスクを嫌がる場合、どう慣らせばよいですか?
まずは短時間の散歩など、数分だけ着ける成功体験を重ねることから始めましょう。顔に合うサイズや肌触り、好きな柄を選ぶのもポイントです。
完全に着けられない日があっても、帰宅後に着替えや洗顔でカバーしていきましょう。
Q2. 花粉症と風邪が重なったときの見分け方は?
発熱や体のだるさの有無で区別することもありますが、花粉症でも微熱が出たり、風邪でも鼻水や咳が長引くことがあります。正確な判断は医師の診察が必要です。
Q3. 低年齢でも花粉症は進行するのか?
1〜2歳でも季節性の鼻水やくしゃみを繰り返す子はいますが、症状の進行や重症化の速度は個人差が大きく、家庭だけで見極めるのは難しいです。
年齢だけで判断せず、必要に応じて医師の評価を受けることが望ましいです。
Q. 食事で気をつけることはありますか?
基本は主食・主菜・副菜のバランスです。乳酸菌食品などの効果は体質差が大きいため、短期間で様子を見て合わなければ無理をせず中止しましょう。
花粉症などアレルギー症状に関しては、青魚(サバ・イワシ・サンマなど)、亜麻仁油・えごま油などに多く含まれるオメガ‑3脂肪酸に効果があるとされています。
8. おわりに
子どもの花粉症は珍しいものではありませんが、生活に及ぼす影響は小さくありません。
だからこそ、子ども自身と家族が疲れ切ってしまう前に、花粉を家に持ち込まない・溜め込まない・生活を整えてよく眠るという基本を土台に、必要な医療を早めに組み合わせていきましょう。
花粉症のような症状があるけれど、花粉が原因かどうかわからない場合は、まずは病院でアレルギーの検査を受けることをおすすめします。
検査で原因が特定できれば、生活環境の工夫や薬の使い方、場合によっては舌下免疫療法など、子どもに合った対策を計画的に進められます。












