咳が止まらない時は何科の病院に行けばよいか

咳が2週間以上続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
咳の原因として多いのは、風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症です。また、タバコの煙を吸い込んだときや、激しい運動のあとに咳が出ることもありますが、こうした場合は時間とともに自然におさまることがほとんどです。
一方、2週間以上咳が続く場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。「そのうち治るだろう」と軽く考えて放置するのは危険です。
この記事では、咳が長引くときに考えられる主な病気と、受診する診療科を判断するための目安を解説します。
目次
1.咳が2週間以上続く主な病気
咳が2週間以上続く場合、背景に病気が隠れている可能性があります。代表的なものには、以下のような疾患があります。
<喘息>
夜間や早朝に咳が悪化し、息苦しさや喘鳴を伴うことがあります。気道の慢性的な炎症が原因で、呼吸機能検査が診断に役立ちます。
<咳喘息>
喘息と似ていますが、主な症状は咳のみで、ゼーゼーという呼吸音が目立たないのが特徴です。放置すると典型的な喘息に移行することがあります。
<マイコプラズマ肺炎>
発熱や倦怠感に加え、乾いた咳が長く続くのが特徴です。若年層に多く、胸部レントゲンや血液検査で診断されます。
<アトピー咳嗽(がいそう)>
アレルギー体質の人に多く、痰を伴わない咳が続きます。喘鳴(ゼーゼー音)はなく、抗アレルギー薬が効果を示すことがあります。
<COPD(慢性閉塞性肺疾患)>
喫煙歴がある人に多く、慢性的な咳や痰、息切れがみられます。進行性の疾患で、早期発見が重要です。
◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>
<胃食道逆流症>
胃酸の逆流により、横になると咳が出やすくなります。胸やけや喉の違和感を伴うこともあります。
<心不全>
夜間の咳や息苦しさが目立ち、横になると症状が悪化することがあります。高齢者では特に注意が必要です。
【参考情報】『心不全で咳や痰がでるのはなぜですか?』心不全のいろは
https://heart-failure.jp/faq/answer-024/
このほか、降圧薬などの薬剤による副作用や、ストレス・不安などの心因性要因が、長引く咳の原因になることもあります。
2.咳の種類~乾いた咳と湿った咳
咳は、痰の絡まない乾いた咳(乾性咳嗽)と、痰が絡む湿った咳(湿性咳嗽)に分けられます。
2-1.乾いた咳(乾性咳嗽)
乾いた咳(乾性咳嗽)は、「コンコン」「ケンケン」といった音が特徴で、痰をほとんど伴いません。主に肺や気管に炎症が起こることで生じ、空咳が続く傾向があります。
<乾いた咳の原因となる主な病気>
・咳喘息
・アトピー性咳嗽
・胃食道逆流症
・百日咳
・間質性肺炎
2-2.湿った咳(湿性咳嗽
湿った咳(湿性咳嗽)は、のどや気道にたまった痰を外に出すために起こる咳で、ゴロゴロとした痰の音を伴うことが多いのが特徴です。
<湿った咳の原因となる主な病気>
・気管支炎
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・結核
◆「結核とはどんな病気?呼吸器内科の専門医が解説します」>>
・気管支拡張症
・副鼻腔炎
◆「副鼻腔炎とはどんな病気?咳・アレルギー・いびきとの関係」>>
咳の性質を見極めることは、原因となる病気を考えるうえで重要な手がかりになります。しかし、風邪やインフルエンザ、肺がんのように、初期は乾いた咳が中心でも、病状が進行すると痰を伴う湿った咳に変わることがあります。
そのため、咳の種類だけで原因を判断するのではなく、息切れや胸の痛み、体重減少、むくみなど、ほかの症状もあわせて確認することが重要です。
3.急性の咳と慢性の咳
咳は、続いている期間によって「急性咳嗽」「遷延性(せんえんせい)咳嗽」「慢性咳嗽」の3つに分類されます。
この区分は、原因を考えたり受診の目安を判断したりするうえで重要です。
3-1.急性咳嗽
発症から3週間以内におさまる咳を指します。通常は、ほかの症状の改善とともに自然に軽快します。
<急性咳嗽の原因となる主な病気>
・風邪
・インフルエンザ
・急性気管支炎
・肺炎
3-2.遷延性咳嗽
咳が3週間以上8週間未満続く状態です。長く続くため、病院で原因を調べてもらう必要が出てくることが多くなります。
<遷延性咳嗽の原因となる主な病気>
・咳喘息
・アトピー咳嗽
・百日咳
・副鼻腔炎
・胃食道逆流症
【参考情報】『遷延性咳嗽・慢性咳嗽』Primary Care
https://primary-care.sysmex.co.jp/speed-search/disease/index.cgi?c=disease-2&pk=261
3-3.慢性咳嗽
咳が8週間以上続く場合を指します。慢性的な病気が関与していることが多く、自然に治ることはほとんどありません。原因を特定し、適切な治療を行うことが重要です。
<慢性咳嗽の原因となる主な病気>
・喘息
・COPD
・肺がん
【参考情報】『Cough When to see a doctor』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/symptoms/cough/basics/when-to-see-doctor/sym-20050846#:~:text=Call%20your%20doctor%20if%20your,Experiencing%20a%20fever
4.咳が止まらないときの受診先
咳の原因は呼吸器の病気が多いため、咳が止まらないときは、呼吸器内科を受診するのが基本です。
<呼吸器内科>
喘息、肺炎、COPDなど、咳を主症状とする病気の診断と治療を専門としています。咳が2週間以上続く場合や、夜間に悪化する咳、息切れを伴う場合は、優先的に検討したい診療科です。
<耳鼻咽喉科>
副鼻腔炎や後鼻漏、のどの炎症が疑われる場合に適しています。鼻づまり、鼻水、のどの違和感が強いときは受診の目安になります。
<消化器内科>
胃食道逆流症が原因と考えられる場合に選択肢となります。食後や横になったときに咳が出る、胸やけや呑酸を伴う場合は相談するとよいでしょう。
<循環器内科>
心不全など心臓の病気が疑われる場合に受診します。夜間の咳や息切れ、むくみ、体重増加を伴うときは注意が必要です。
どの診療科を受診すべきか迷う場合は、まず内科で相談し、必要に応じて専門科へ紹介してもらうのが安心です。
5.呼吸器内科と一般内科の違い
内科の病院には、咳や腹痛、発熱などさまざまな症状を総合的に診るところと、呼吸器内科、消化器内科、神経内科など、特定の病気を専門的に診るところがあります。
内科の中でも呼吸器内科は、空気の通り道である気道や、空気中の酸素を体の中に取りいれて二酸化炭素を体の外に出す肺など、呼吸器の病気を専門に扱う診療科です。
風邪など急性の病気の時は一般の内科を受診してもいいのですが、咳が2週間以上続く場合は、その多くが喘息や肺炎など呼吸器の病気が原因によるものです。
咳がなかなか止まらない時、咳がひどくて夜も眠れない時、咳が続いて呼吸をするのが苦しい時や息切れがひどい時は、一度呼吸器内科を受診することをおすすめします。
6.呼吸器内科で行われる検査
呼吸器内科では、咳や息切れ、胸苦しさなどの原因を詳しく調べるために、いくつかの専門的な検査を組み合わせて行います。症状や経過に応じて必要な検査が選ばれます。
<胸部画像検査>
胸部レントゲン検査は、肺炎や肺がんなどを確認する基本的な検査です。さらに詳しい評価が必要な場合には、CT検査を行い、レントゲンでは分かりにくい小さな病変や気管支の異常を調べます。
<血液検査>
炎症の程度や感染の有無、アレルギー体質の指標(好酸球、IgEなど)を調べます。咳の原因が感染かアレルギーかを見極める手がかりになります。
<スパイロメトリー>
息を大きく吸ったり吐いたりして、肺にどれだけ空気を出し入れできるかを測定します。喘息やCOPDなど、気道が狭くなる病気の診断や重症度の評価に役立ちます。
<呼気NO検査>
吐いた息に含まれる一酸化窒素(NO)を測定し、気道のアレルギー性炎症の程度を評価します。喘息の診断や治療効果の確認に利用されます。
<モストグラフ>
気道の状態を詳しく評価するための呼吸機能検査です。気道がどの程度狭くなっているかを調べる際に用いられます。
<喀痰検査>
痰を採取して、細菌やウイルス、炎症細胞の有無を調べます。感染症や慢性気道疾患の評価に用いられます。
7.おわりに
ただの風邪で、2週間以上咳が続くことはめったにありません。市販の風邪薬でつらさをしのぎながら、ズルズル受診を引き延ばしていると、病気が進行して治療に時間がかかってしまう恐れがあります。
特に高齢者は、「風邪だと思っていたら肺炎だった」というケースが多いので、早めに適切な診断と治療を受けましょう。
呼吸器内科の専門医は、日本呼吸器学会のホームページで検索することができます。
【参考情報】『専門医検索』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/search/specialist/index.php
しつこい咳、長引く咳に悩んでいる方は、風邪だと勝手に判断せずに、お近くの呼吸器内科を受診してください。













