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咳が止まらない時は何科の病院に行けばよいか

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年04月21日
長引く咳

咳が2週間以上続く場合は、適切な医療機関を受診しましょう。

咳の原因で多いのは、風邪やインフルエンザなどの感染症です。

タバコの煙を吸ってしまった時や激しい運動をした時などにも咳が出ることがありますが、しばらくすると自然に治まるのであまり心配はありません。

しかし、2週間以上咳が続く場合は何らかの病気が隠れている場合があるので、軽く考えたり、そのうち治るだろうと放っておいたりするのはとても危険です。

この記事では、咳が長引いている時に疑われる病気を紹介し、何科を受診すればいいのか判断する際の目安をお伝えします。

1.咳が2週間以上続く病気とは

2週間
咳が2週間以上続く場合、以下のような病気が考えられます。

・マイコプラズマ肺炎
・アトピー性咳嗽(がいそう)
・喘息
・咳喘息
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・逆流性食道炎
・心不全

その他、薬の副作用や心因性の原因が考えられるので、病院では問診のほか、採血やレントゲン検査、呼吸機能検査などを経て、咳の原因を見極めます。

◆「咳が止まらない原因」について>>

2.咳の種類と見分けるポイント

咳の種類
咳の種類は、痰の有無やどのくらいの期間続いているかによって分けられます。そして、咳の種類によって、疑われる病気も異なります。

2-1.乾いた咳と湿った咳


咳には「乾いた咳(乾性咳嗽:かんせいがいそう)」と「湿った咳(湿性咳嗽:しっせいがいそう)」があります。

乾いた咳(乾性咳嗽)とは、「コンコン」「ケンケン」といった音がする、痰の絡まない咳のことで、肺や気管の炎症によって引き起こされます。

湿った咳(湿性咳嗽)とは、のどや気道に絡まった痰を排出するための痰をともなった咳のことです。

それぞれの原因には、以下のような病気が考えられます。

<乾いた咳の原因となる病気>
咳喘息
アトピー咳嗽
百日咳
COPD(慢性閉塞性肺疾患)

◆「咳喘息」について>>
◆「アトピー咳嗽」について>>
◆「百日咳」について>>
◆「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」について>>

<湿った咳の原因となる病気>

アトピー咳嗽
慢性気管支炎
気管支拡張症
風邪やインフルエンザ

◆「慢性気管支炎」について>>
◆「気管支拡張症」について>>
◆「風邪」について>>
◆「インフルエンザ」について>>

2-2.急性の咳と慢性の咳


風邪やインフルエンザなどのウイルス感染によって引き起こされる咳は、一般的に「急性咳嗽:きゅうせいがいそう」と言い、症状は1~2週間程度でやわらぎます。

【参考情報】『Cough When to see a doctor』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/symptoms/cough/basics/when-to-see-doctor/sym-20050846#:~:text=Call%20your%20doctor%20if%20your,Experiencing%20a%20fever

3~8週間続く咳は、「遷延性咳嗽:せんえんせいがいそう」と呼ばれ、その原因は様々ですが、咳喘息、逆流性食道炎などが主な原因です。

◆「咳喘息」について>>

さらに、8週間以上続く咳は「慢性咳嗽:まんせいがいそう」と呼ばれ、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺がんといった、重篤な病気が原因となっている可能性が出てきます。

◆「COPD」について>>
◆「肺がん」について>>

治療が長引くことや、命にかかわることもあるため、咳が2週間以上続く場合はすぐに受診しましょう。

3.迷ったら呼吸器内科を受診しましょう

迷う
何科を受診すればいいのか迷ったら、まずは呼吸器内科を受診しましょう。

「8週間以上続く咳の原因は、咳喘息,アトピー咳嗽,副鼻腔気管支症候群の 3 つで 80%以上を占める」と言われているように、長引く咳の原因のほとんどが呼吸器の病気だからです。

【参考情報】『遷延性咳嗽・慢性咳嗽』Primary Care
https://primary-care.sysmex.co.jp/speed-search/disease/index.cgi?c=disease-2&pk=261

特に、喘息に強い専門医のいる病院がおすすめです。

また、花粉症やシックハウス症候群など、アレルギーの症状として咳が止まらなくなることもあります。

アレルギー体質の方は、アレルギーに強い呼吸器内科や耳鼻科がおすすめです。

◆「アレルギーが原因となる咳」について>>
◆「花粉症とは?」について>>

呼吸器内科や耳鼻科の検査で異常が認められなかったにもかかわらず咳が止まらない場合は、逆流性食道炎や心不全、あるいはうつ病など心因性の病気が隠れていることがあります。医師からそれらの可能性を指摘された時は、専門的な治療ができる病院を紹介してもらいましょう。

◆「ベストな病院選び」について>>

4.呼吸器内科と一般内科の違い

呼吸器内科
内科の病院には、咳や腹痛、発熱などさまざまな症状を総合的に診るところと、呼吸器内科、消化器内科、神経内科など、特定の病気を専門的に診るところがあります。

内科の中でも呼吸器内科は、空気の通り道である気道や、空気中の酸素を体の中に取りいれて二酸化炭素を体の外に出す肺など、呼吸器の病気を専門に扱う診療科です。

風邪など急性の病気の時は一般の内科を受診してもいいのですが、咳が2週間以上続く場合は、その多くが喘息や肺炎など呼吸器の病気が原因によるものです。

咳がなかなか止まらない時、咳がひどくて夜も眠れない時、咳が続いて呼吸をするのが苦しい時や息切れがひどい時は、一度呼吸器内科を受診することをおすすめします。

◆「呼吸器内科」について>>

5.おわりに

ただの風邪で、2週間以上咳が続くことはめったにありません。市販の風邪薬でつらさをしのぎながら、ズルズル受診を引き延ばしていると、病気が進行して治療に時間がかかってしまう恐れがあります。

特に高齢者は、「風邪だと思っていたら肺炎だった」というケースが多いので、早めに適切な診断と治療を受けましょう。

呼吸器内科の専門医は、日本呼吸器学会のホームページで検索することができます。

【参考情報】『専門医検索』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/search/specialist/index.php

しつこい咳、長引く咳に悩んでいる方は、風邪だと勝手に判断せずに、お近くの呼吸器内科を受診してください。

◆「咳が続くときに心配な病気の症状・検査・治療」について>>

※参考文献:『咳事典 咳を科学する-その咳、大丈夫?危険!-』(清益功浩 著/医薬経済社)

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