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息切れの原因は?危険サインと受診の目安・検査の流れを呼吸器内科が解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年01月26日

「階段を上がると胸が苦しい」「前より息が上がりやすい」。そんな変化は、体力や年齢だけでは説明できないことがあります。

息切れは、肺や気道、心臓、血液、自律神経など複数の仕組みがかかわるサイン。中には緊急対応が必要な病気が隠れていることもあります。

この記事では、まず見逃してはいけない危険なサインを押さえ、そのうえで息切れが起こる仕組み、受診前に整理しておくと診断に役立つポイントをお伝えします。

「様子見でいいのか」「どこに相談すべきか」を判断する材料にしてください。

1.まず確認!救急受診が必要な「危険サイン」


息切れは、心臓や肺の深刻な病気の初期サインであることがあります。

まずは、救急受診が必要な息切れの危険サインを整理します。


<胸の痛みや冷や汗を伴う息切れ>
胸が強く締めつけられる、圧迫される、痛みが顎・肩・背中へ広がる——こうした症状に冷や汗を伴う場合、心臓のトラブル(狭心症・心筋梗塞など)が疑われます。様子見は禁物です。

<安静時でも強い息苦しさ・唇が紫がかる>
休んでいても息苦しい、唇や爪が紫がかる(チアノーゼ)といった変化は、血液中の酸素不足が考えられます。直ちに救急車を呼んでください。

<突然の片側胸痛と急な息切れ>
「急に胸の片側が刺すように痛い」「その直後から息が吸えない」ときは、気胸や肺血栓塞栓症の可能性があります。

◆「気胸(ききょう)」についてくわしく>>

海外へのフライトなどで長時間座っていたり、手術後、脱水などの背景があればなおさら注意が必要です。

<強い動悸・脈の乱れ・意識が遠のく感じ>
息切れに加えこれらの症状があるときは、不整脈など循環器の問題が潜んでいることがあります。

上記に当てはまるときは、発症した時刻、きっかけ(歩行・階段・安静時など)、同時に起きた症状をメモし、病院に相談してください

2.「取り込む」「運ぶ」「使う」のどこで滞るか


呼吸は、肺で酸素を取り込み、心臓と血管・血液で全身に運び、筋肉や細胞で使うという三段階で成り立っています。

このうちどこか一つでもうまく働かないと、少しの動きでも「苦しい」と感じます。


・取り込む(肺・気道)
喘息で気道が狭くなる、間質性肺炎で肺の柔らかさが失われる、肺炎でガス交換が妨げられる——いずれも酸素の取り込み効率が下がります。

・運ぶ(心臓・血管・血液)
心不全でポンプ力が落ちる、不整脈で拍出が安定しない、貧血で酸素を運ぶヘモグロビンが足りない——「普段と同じ運動でも息が上がる」状態になります。

・使う(筋肉・自律神経・代謝)
自律神経の乱れで呼吸が浅く速くなる、筋力低下や体重増加で動作の負担が増える——体内の酸素が十分でも息切れしやすくなります。


さらに、運動不足、睡眠不足、ストレス、薬の影響なども影響します。

原因はひとつとは限らず、複数が重なっている場合もあります。

3.原因を絞るヒント:受診前にここだけメモ


診察時間を有効に使うために、「いつ・何をしたとき・どの程度」を生活場面と結びつけて書き出しておきましょう。

言葉にすることで、検査の選択や次の一手がぶれません。


・時期ときっかけ
いつから目立つか/階段・坂道・早歩き・家事・入浴・会話など、どの動作で強まるか/安静時にもあるか/夜間・明け方に悪化するか

・伴う症状
咳・痰・ゼーゼーという呼吸音、胸痛、動悸、むくみ、発熱、いびきや日中の強い眠気

・背景情報
喫煙歴、高血圧・脂質異常・糖尿病、アレルギー体質、服用中の薬、最近かかった感染症や後遺症の有無、体重変化、睡眠の質・ストレス


伝え方の目安としては、「平地は平気だが坂で苦しい」「50メートルくらい歩くと立ち止まってしまう」「家事が途中で休み休みになる」など、具体性があると診断の助けになります。

4.呼吸器に由来する主な原因


息切れは、肺や気道などの呼吸器の働きが低下すると起こることが多いです。

そのため、呼吸器疾患による息切れの背景を理解しておくことは、早期発見と適切な対処につながります。

4-1.喘息

息切れに加え咳が出る、夜間や明け方に症状が悪化する、冷気や花粉などの刺激で症状が現れる——こうした場合は喘息の疑いがあります。

◆「喘息」についてくわしく>>

喘息は慢性疾患なので完治は難しいのですが、吸入ステロイド薬などを用いた治療で、健康な人と変わらない生活を送ることを目指していきます。

◆「吸入ステロイド薬の副作用は?」>>

4-2.COPD(慢性閉塞性肺疾患)

中高年で喫煙歴のある方に多い病気です。「平地は問題ないが坂道や階段で立ち止まる回数が増えた」という訴えが典型です。

主な症状である咳や痰を「長年の癖」と見なして放置すると、息切れが強くなっていき、呼吸が苦しくなります。

診断では呼吸機能検査が重要です。数値で現状を把握すると、禁煙や呼吸リハビリへの意欲が高まります。

◆「COPD」の詳しい情報をチェック>>

4-3.高齢者の肺炎

発熱や悪寒、痰のような症状ががあれば肺炎に気付きやすいのですが、高齢者では熱が目立たず、息切れのみが出ることもあります。

病気が疑われる場合は、画像検査や血液検査で炎症の程度を確認し、重症化リスクを見極めます。

特に高齢者は、回復途中で無理をすると治りが遅れるため、十分な休養が大切です。

◆「高齢者に多い!夏の肺炎」の情報>>

4-4.間質性肺炎

乾いた咳が続き、数か月のうちに階段が辛くなる——そんなじわじわと進む息切れは、間質性肺炎のせいかもしれません。

疑われる場合は、胸部画像検査や呼吸機能検査で肺の硬さや拡散能を評価し、必要に応じて専門治療を検討します。

◆「間質性肺炎とはどんな病気?」>>

4-5.感染後の後遺症(例:新型コロナ後)

「コロナは治ったはずなのに、少し動いただけで息が上がる」といった症状が続く場合、感染後の後遺症が関係していることがあります。

このような場合は、なるべく休養を取り、段階的に体力を戻しつつ、呼吸リハビリや睡眠・栄養の調整を行って体調を戻していきます。

【参考情報】『新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kouisyou_qa.html

4-6.睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に息が苦しくなったり、息切れで目が覚めてしまう人は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。

いびきや日中の眠気、起床時の頭痛を伴う場合は、さらに可能性が高くなります。

◆「いびき・昼間の眠気は、睡眠時無呼吸症候群の初期症状?」>>

5.循環器に由来する主な原因


息切れは呼吸器だけでなく、心臓や血管の病気でも起こります。

5-1.心不全

心不全があると、体内の水分をうまく処理できなくなることで、息切れが起こります。

特に「横になると苦しい」「夜中に息苦しくて起きる」といった症状がある場合は注意が必要です。

さらに、むくみや体重の増加を伴うときは、ますます心不全の可能性が高まります。

心不全はゆっくり進行することも多いため、早めの受診が生活の質を保つ鍵になります。

【参考情報】『心不全』国立循環器病研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/heart-failure/

5-2.狭心症・心筋梗塞

運動や労作の際に、胸の圧迫感や肩・背中・あごへの痛み、冷や汗などを伴う場合は、狭心症や心筋梗塞が疑われます。

【参考情報】『狭心症とは』日本心臓財団
https://www.jhf.or.jp/check/opinion/category/c4-1/

息切れと同時にこれらの症状があるときは、迷わず救急車を呼んでください。

痛みが典型的でなくても、「何となく違和感が強くなっている」と感じた時点で早めに相談することが大切です。

5-3.不整脈・心筋症・弁膜症

「脈が飛ぶ」「脈が急に速くなる」「目の前が暗くなる」といった症状に息切れを伴う場合は、心臓の拍動リズムが乱れている可能性があるので、心電図や24時間ホルター心電図で確認します。

急な息切れやふらつきがある場合は、無理をせず、早めに病院を受診しましょう。できれば、循環器科のある病院がいいでしょう。

【参考情報】『不整脈とは』日本心臓財団
https://www.jhf.or.jp/check/opinion/category/c1/

6.呼吸器・循環器以外の原因


息切れは、肺や心臓だけでなく、血液やホルモン、神経の働き、体力や生活習慣などさまざまな要因で起こります。

こでは、呼吸器や循環器以外で息切れが起こる主な原因と、その特徴について整理します。

6-1.貧血

血液中の酸素を運ぶヘモグロビンが不足すると、家事や階段といった日常の動作でも息切れを感じやすくなります。

息切れに、顔色が悪い、動悸やめまいを伴う場合は、血液検査で確認が必要です。

特に女性は、月経の影響で貧血になりやすいので、「単なる疲れ」と思い込まないよう注意が必要です。

◆「隠れ貧血」の可能性をチェック>>

6-2.甲状腺の働きの変化

甲状腺ホルモンのバランスが乱れると、動悸や発汗の増加、体重の急な変化、手指の震えなどが現れ、息切れを感じやすくなります。

【参考情報】『甲状腺』日本内分泌学会
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=7

6-3.自律神経の乱れ・過換気症候群

強い不安や緊張が続くと、呼吸が浅く速くなり、酸素は十分でも息苦しさを感じることがあります。また、胸の違和感や手足のしびれを伴う場合もあります。

呼吸法を身につけたり、ストレスの原因を確認することが改善のきっかけになります。

【参考情報】『Dysautonomia』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/6004-dysautonomia

◆「過換気症候群」についてくわしく>>

6-4.更年期・体力低下・体重増加・薬の影響

更年期のホットフラッシュや睡眠の質の低下、運動不足や体重増加による動作負担、心不全の治療に使われるβ遮断薬(ベータブロッカー)などの薬の影響も息切れに関係します。

【参考情報】『更年期障害』日本産科婦人科学会
https://www.jsog.or.jp/citizen/5717/

7.どの診療科へ行けばいい?


息切れは原因が呼吸器だけでなく、心臓や血液、ホルモンなどさまざまな臓器に関係していることがあります。

そのため、症状に応じて適切な診療科を選ぶことが重要です。

7-1.まずは呼吸器内科・内科へ

咳や痰、ゼーゼーとした呼吸、風邪のあとも続く息切れ、階段での息苦しさの増加――こうした症状がある場合、まずは呼吸器内科か内科を受診するのが基本です。

医師は問診や基本的な検査を通じて、呼吸器が原因か、それとも心臓や血液など他の領域が関係しているかを素早く見極めます。

◆「呼吸器内科とはどんなところ?」>>

7-2.循環器のサインが強いとき

胸の締め付け、放散痛(痛みが別の場所に広がって感じられる現象)、強い動悸、失神、前失神(意識を失う直前の感覚)がある場合は循環器内科が適切です。

7-3.迷ったときの考え方

息切れは複数要因が重なることが珍しくありません。

最初にどの診療科を受診したらいいのか決められない時は、呼吸器内科か内科を受診してください。必要に応じて循環器内科・内分泌内科などと連携して治療を進めます。

8.呼吸器内科受診の流れと検査


息切れや咳、胸の違和感などの症状がある場合、呼吸器内科では問診と身体診察をもとに、必要な検査を組み合わせて原因を調べます。

8-1.来院から問診まで

受診時には、息切れがいつから、どのような場面で、どの程度起こるかを確認します。

夜間や明け方の悪化、咳や痰、胸痛、動悸、むくみ、発熱、いびきや日中の眠気の有無なども含め、喫煙歴や既往歴、服薬状況、最近の感染や後遺症、体重変化や睡眠の質などをお聞きします。

事前にメモを用意しておくと、どんな検査が必要なのか判断するのがスムーズになります。

8-2.身体診察・検査

呼吸数や血中酸素飽和度(SpO₂)、胸部の聴診で呼吸音や雑音を確認します。心音や下肢のむくみ、体重の変化もあわせてチェックされます。

さらに、症状と診察所見に基づき、必要な検査を組み合わせます。

 ・胸部X線(レントゲン):肺炎、心拡大、胸水の有無などを確認

 ・血液検査:炎症反応、貧血、甲状腺、電解質などを総合評価

 ・心電図:心臓の働きを確認

 ・呼吸機能検査(スパイロメトリー):気道の狭さや肺の容量を評価

 ・呼気一酸化窒素(FeNO):気道炎症の指標として実施することも

 ・CT:間質性肺炎や肺血栓塞栓症が疑われる場合に選択

 ・6分間歩行テスト:歩行時の酸素低下や体力、持久力を把握

 ・睡眠時無呼吸症候群の検査:簡易検査、必要に応じ精密検査

◆「睡眠時無呼吸症候群の簡易検査」について>>

9.自宅でできる一般的な対策


ここで紹介する方法は、一時的な対処法と基本的な健康習慣です。

強い息切れや症状の悪化がある場合は、まずは病院を受診してください。

9-1.軽い運動

運動不足などで心肺機能が弱っている場合は、軽い運動(ウォーキング・ストレッチ・軽い筋トレなど)を少しずつ行うことで改善が見込めます。

一方、息切れの原因が病気である場合は、運動が逆効果になることがあります。

9-2.呼吸の整え方

口をすぼめてゆっくり吐き、自然に吸う「口すぼめ呼吸」や、お腹の上下を意識する「腹式呼吸」は、浅く速い呼吸の悪循環を改善するのに役立ちます。

仕事や家事の前に、一度呼吸を整える習慣をつけると効果的です。

【参考情報】『腹式呼吸のやり方』日本医師会
https://www.med.or.jp/komichi/holiday/sports_02_pop.html

9-3.生活と環境の工夫

禁煙、十分な睡眠、ストレスの管理、無理のない体重管理が基本です。

室内の換気やハウスダスト対策も、息切れ軽減に役立ちます。

天気予報で花粉やPM2.5の情報を活用し、外出や洗濯の計画に反映させるとさらに安心です。

◆「花粉対策」をチェック>>

9-4.栄養の視点(一般的な考え方)

鉄分を意識した食事、主食・主菜・副菜のバランス、脱水の予防を基本に考えましょう。

サプリメントを検討する前に、まずは食事全体の見直しを優先することが重要です。

◆「女性の悩みの多くは、鉄不足が原因です」>>

10.息切れに関するよくある質問


Q1. 運動中だけ息切れします。受診は必要?
運動不足や体重の影響でも息切れは起こりますが、「以前より明らかに悪化している」「胸痛や動悸、めまいを伴う」「咳やゼーゼーが増えた」といった変化があれば受診をおすすめします。

Q2. 階段や坂道が苦しいのは年齢のせいでは?
COPD、喘息、心不全、貧血などが背景にあり、加齢だけでは説明できないことも多いです。日常に支障が出る・悪化が続くなら、早めの受診が安心です。

Q3. コロナ感染の後遺症で息切れが続きます。どれくらい様子見すればいい?
数週間たっても改善がみられず、生活に支障がある場合は受診を。必要に応じて呼吸リハビリや睡眠の整え方を取り入れます。

Q4. 喫煙者です。どんな検査が重要?
呼吸機能検査(スパイロメトリー)で肺の状態を把握し、画像検査などを組み合わせます。また、禁煙は息切れ対策の基本です。

◆「呼吸器内科で行われる専門的な検査について」>>

11.おわりに

息切れは、呼吸器・循環器・血液・自律神経・生活要因などが原因で生じます。

「年齢のせい」と片づけず、不安になったときこそ受診のタイミングととらえ、病院で原因を見極めることが大切です。

原因に応じた治療や生活習慣の改善で、呼吸をラクにして、日常生活の質を取り戻していきましょう。

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

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