喘息に関する主なアレルゲンと避ける・減らす対策
喘息は、ダニをはじめとするアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が原因で悪化することが多い病気です。
アレルゲンの多くは目には見えませんが、私たちの身の回りにたくさん存在し、知らず知らずのうちに吸い込んでしまうことで、発作が引き起こされることがあります。
この記事では、喘息を悪化させる主なアレルゲンの種類と対策をわかりやすく解説します。発作を防ぎ、快適な生活を送るためのヒントをチェックしてみましょう。
目次
1.喘息とアレルギーの関係とは?
アレルギーが原因の喘息は子どもに多いと言われていますが、大人でもアレルゲンによって発症することがあります。特にアレルギー体質の人は、注意が必要です。
1-1.喘息とはどのような病気か
喘息とは、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が生じることで、以下のような症状が現れる病気です。
<主な症状>
・咳
・息苦しさ
・喘鳴(ぜんめい)
炎症により敏感になった気道は、冷たい空気などのわずかな刺激にも反応し、上記のような症状が引き起こされます。
症状は夜間や早朝に悪化しやすく、激しい咳が続いたり、呼吸が苦しくて動けなくなることもあります。
悪化すると救急対応が必要になることもあるので、適切な治療や日常的な管理が重要です。
1-2.アレルギーで喘息が起こるメカニズム
喘息の原因には、アレルギーによるものと、疲労やストレスなどアレルギー以外のものがありますが、アレルギー性の喘息には、免疫反応が深く関わっています。
私たちの体には、細菌やウイルスなどの異物から身を守るため、免疫というシステムが備わっています。このシステムが病原体を攻撃して体外へ排除します。
【参考情報】『Immune System』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/body/21196-immune-system
さらに、一度体内に侵入した病原体の情報を記憶して抗体を作ることで、次に同じものが侵入した際に、抗体が病原体と結合して動きを止めたり、素早く体外へ追い出したりします。
しかし、この免疫のシステムが、本来は害のないものを誤って「敵」とみなしてしまうと、敵とみなしたものの情報を記憶して抗体を作り、対外へ追い出そうとします。
この時、敵を追い出すために、「ヒスタミン」や「ロイコトリエン」という物質が放出されるのですが、これらの物質の影響で、咳やくしゃみ、鼻水などの症状が出ます。これがアレルギーの仕組みです。
【参考情報】『Allergies』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/allergies/symptoms-causes/syc-20351497
ヒスタミンやロイコトリエンは気道を刺激して炎症を引き起こします。すると、気道の筋肉が腫れたり収縮したりすることで、気道が狭くなります。
その影響で、呼吸が苦しくなったり、咳が止まらなくなったりするのが、アレルギーにより喘息が引き起こされる流れです。
2.喘息を引き起こす主なアレルゲン
この章では、喘息の発症や症状の悪化に関係する主なアレルゲンを紹介します。
2-1.ダニ
ダニは、人の垢やフケ、食べカスなどをエサにし、ハウスダストの中にも多く含まれています。
<ハウスダストとは?>
ハウスダストとは、ホコリやダニの死骸、繊維くず、花粉などが混ざった細かいゴミのことです。目に見えないほど小さく、とても軽いため、空気中に舞い上がりやすく、知らないうちに吸い込んでしまうことがあります。
ダニは、暗く湿度の高い場所を好みます。特に梅雨の時期は湿度が上がるので、ダニが繁殖しやすくなります。
また、布団や寝具、カーペット、ソファなどの布製品はダニが多く生息しやすいため、注意が必要です。
さらに、小麦粉やホットケーキミックスなどの粉類もダニが繁殖しやすい食品です。袋の中で増えたダニを知らずに食べてしまうと、アレルギー症状を引き起こすことがあります。
◆「アレルギーの一種・パンケーキ症候群を知っていますか?」>>
ダニによるアレルギー反応は、生きているダニだけでなく、死骸やフンでも引き起こされます。
2-2. カビ
カビは空気中に多く存在し、大量の胞子を放出します。この胞子がアレルギー反応を引き起こし、喘息を悪化させる原因になることがあります。
<喘息に影響を与えるカビの種類>
代表的なものにアスペルギルスがあります。湿気の多い場所で繁殖しやすく、浴室やエアコン内部などを好みます。
健康な人にはあまり影響しませんが、アスペルギルスにアレルギーのある人は要注意です。特に肺アスペルギルス症を発症すると、気道の炎症が悪化し、肺の組織が傷つくことで、喘息のコントロールが難しくなります。
【参考情報】『Allergic Pulmonary Aspergillosis』Johns Hopkins Medicine
https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/allergic-pulmonary-aspergillosis
このほか、ペニシリウム、クラドスポリウム、アルテルナリア、フザリウムなどもアレルギーの原因になるカビです。
<カビが発生しやすい場所と時期>
カビは、キッチン、浴室、洗面所、洗濯室など、湿気が多い場所に発生しやすく、特に梅雨の時期に増えます。
ただし、冬でも窓のような結露がたまる場所や、掃除が不十分な環境では発生しやすくなるため、一年中注意が必要です。
◆「喘息・アレルギーを悪化させない、カビと掃除の注意点」>>
2-3.花粉
喘息の人が花粉症になると、以下の理由により症状が悪化しやすくなります。
・花粉症による鼻炎が気道にも影響を与え、喘息を悪化させる
・鼻づまりによる口呼吸で花粉を口から大量に吸い込み、気道が刺激される
アレルギーの原因となる主な花粉には、スギ、ヒノキ、シラカンバ、イネ、ブタクサなどがあります。
花粉が飛散する時期は植物によって異なるため、春以外の季節でも花粉で症状が悪化することがあります。
2-4.ペット
犬や猫、鳥、ハムスターなどのペットの毛やフケが、アレルギーの原因になることがあります。特に犬や猫は飼育数が多いため、アレルギーの患者も多い傾向にあります。
ペットの毛やフケはとても軽いため、空気中に舞いやすく、家の中のさまざまな場所に広がります。また、エアコンや換気口にたまった毛やフケが、風によって部屋中に飛散することもあります。
ペットを飼っていなくても、触れたり近づいたりするだけでアレルゲンを吸い込み、咳などの症状が出ることがあります。
2-5.食物
特定の食品に含まれるタンパク質などのアレルゲンに体が過剰に反応し、喘息の症状が現れることがあります。
<代表的な食材>
・鶏卵
・乳製品
・小麦
・甲殻類(エビ・カニなど)
・そば
・ナッツ類
食物によるアレルギーは、口にするだけでなく、その食物に触れたり吸い込んだりすることでも症状が出る場合があります。
症状が重くなると、アナフィラキシーショックという強いアレルギー反応が出る危険な状態を引き起こし、救急対応が必要になることもあります。
3.アレルゲン対策と予防法
アレルギーによる喘息の悪化を防ぐためには、できるだけアレルゲンに触れないことが大切です。
アレルゲンはしっかりと取り除き、できるだけ室内に入れないようにしましょう。
3-1.室内環境の改善
家の中には、ホコリやダニ、カビ、花粉など多くのアレルゲンが存在します。これらを減らすために、こまめな掃除と洗濯を心がけましょう。
<掃除のポイント>
ホコリやハウスダストは掃除中に舞いあがりやすいため、最初に拭き掃除をしてから掃除機をかけると効果的です。
湿った雑巾やモップで拭くと、ホコリが水分に吸着され、床や家具から離れにくくなるため、舞い上がりを防ぐことができます。
乾いた布で拭くと、摩擦で静電気が発生し、ホコリが布にくっつきにくくなるので、拭き掃除は湿った布で行うのがよいでしょう。
掃除中はマスクを着用して、ホコリやハウスダストを吸い込まないようにしましょう。
<カビ対策のポイント>
カビはエアコンや加湿器にも繁殖することがあります。喘息対策には適度な加湿が必要ですが、加湿器を清潔に保たないとカビが発生し、アレルゲンを拡散してしまうため、定期的なお手入れが大切です。
また、空気清浄機を活用すると、ダニやカビの除去とともに空気を清潔に保てます。
◆「喘息に空気清浄機は効果があるのか?」>>
<花粉対策>
花粉の多い時期は、以下の対策を行いましょう。
・洗濯物は室内干しにする
・帰宅時に服についた花粉を払ってから家に入る
・外出時はマスクやメガネを着用し、花粉が付着しないようにする
◆「花粉症対策~外出時・自宅・生活でのポイント」>>
<車内のアレルゲン対策>
意外と忘れがちなのが車内の掃除です。車に乗った途端に喘息の症状が出る場合は、車内にアレルゲンが溜まっている可能性があるので、以下の対策を行いましょう。
・カーエアコンのカビを定期的に掃除する
・社内の土ぼこりやホコリをこまめに取り除く
3-2.ペットを飼っている場合の注意点
ペットを飼っていない場合は、新たに飼うことはおすすめしません。
しかし、すでに飼っている場合は、簡単に手放すことは難しいため、できるだけ喘息発作を防ぐ工夫が必要です。
<ペットのケア>
ペットの毛やフケが飛び散らないよう、以下の対策を行ってみましょう。
・こまめにシャンプーをして清潔に保つ
・日々のブラッシングを習慣にする
・毛が付きやすい布製のソファやラグは避ける
・布製カーテンはこまめに洗濯する
・カーテンをブラインドに変更しても効果的
・可能なら屋外飼育を検討
ペットを屋外で飼うことで、室内のアレルゲンを減らすことができます。ただし、気温や天候の影響を考慮し、ペットの快適な環境を整えることが大切です。
・寝室へのペットの立ち入りを制限
寝室はアレルゲンが溜まりやすく、さらに夜間から朝にかけては喘息の症状が悪化しやすい時間帯です。そのため、ペットとは寝る場所を分けるのが理想的です。
3-3.食事の注意点
特定の食材に対してアレルギーがある場合、自分がどの食材にアレルギーがあるのかを正確に把握して、以下の対策を講じましょう。
<食品選びの注意点>
加工食品を購入する際は、成分表を確認し、アレルゲンが含まれていないかチェックしましょう。
卵、乳、小麦などの特定原材料8品目は、少量でもアレルギー反応を引き起こすことがあるため、特に注意が必要です。
<外食時のリスクと対策>
事前に公式サイトを観たり、店舗に問い合わせてアレルギー情報を確認しておきましょう。飲食店では、加工食品のように詳細な原材料表示がないことが多いため、確認しておくと安心です。
調理器具の使い回しによるアレルゲンの混入(コンタミネーション)の可能性も、頭に入れておきましょう。
【参考情報】『食物アレルギー消費者向けパンフレット 見開き版』消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/efforts/assets/food_labeling_cms204_240509_03.pdf
<万が一の備え>
アナフィラキシーに備えてエピペンを処方されている人は常に携帯し、緊急時に備えましょう。細心の注意を払っても症状が出た場合は、速やかにエピペンで対処しましょう。
4.おわりに
喘息の症状を抑えるためには、治療を継続しながら、アレルゲンを避けたり減らしたりする工夫が必要です。
室内の掃除や寝具の清潔を保つことで、ダニやホコリの影響を減らし、体調を管理しましょう。
調子が良い状態を長く継続することで、発作が起こりにくくなり、健康な人と変わらない生活を送ることができます。
もし対策をしても症状が悪化する場合は、早めに医師に相談しましょう。