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いびきをかく妊婦さんは要注意?妊娠と睡眠時無呼吸症候群との関係

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2023年05月23日

妊娠中は、プロゲステロンというホルモンの作用で眠くなることがあります。

しかし、「妊娠したらいびきがひどくなった」という場合は、睡眠時無呼吸症候群による睡眠不足で眠くなっている可能性があります。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群と妊娠の関係や、母体と胎児に与える影響について説明します。

1.睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気か

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まったり、浅くなったりすることを繰り返す病気です。代表的な症状は、激しいいびきや日中の強い眠気、起床時の頭痛や倦怠感です。

◆「睡眠時無呼吸症候群」について詳しく>>

この病気の原因には、扁桃腺の肥大、顎の小ささ、鼻の病気などがありますが、最も多いのは肥満によるものです。

肥満があると、のどや舌にも脂肪がつき、空気の通り道である気道が塞がれやすくなり、狭くなります。

すると、狭くなった気道を空気が通るときに振動して音が出ることがあります。これがいびきとなります。

【参考情報】『Pregnancy-Onset Habitual Snoring, Gestational Hypertension, and Pre-eclampsia: Prospective Cohort Study』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3505221/

2.なぜ、妊婦が睡眠時無呼吸症候群になるのか

妊娠して体重が増えると、肥満の人と同じようにのどや舌にも脂肪が蓄積し、気道が狭くなりがちです。そのため、睡眠時無呼吸症候群を発症する可能性があります。

また、妊娠前には気づいていなかった軽度の睡眠時無呼吸症候群が発覚し、悪化するケースも見られます。

3.睡眠時無呼吸症候群が妊婦に及ぼす影響

妊娠中に睡眠時無呼吸症候群になると、母体と胎児に悪影響が及ぶことがあります。

3−1.妊娠高血圧症候群

妊娠20週から分娩後12週までに、それまで高血圧ではなかった人が高血圧になった場合と、もともと高血圧だった人が悪化した場合に、妊娠高血圧症候群と診断されます。

重症化すると、胎児の発育不全や機能不全などを起こす可能性があるので、食事療法や降圧薬の服用が必要になります。

通常、就寝中は副交感神経が優位に働きますが、睡眠時無呼吸症候群になると、呼吸が止まったり浅くなったりすることによって脳が覚醒し、交感神経の働きが活発になります。

交感神経が優位になると血圧が上昇しやすくなるため、妊娠高血圧症候群を引き起こす可能性が高まります。

【参考情報】『妊娠高血圧症候群』日本産科婦人科学会
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=6

◆「血圧との関係」について詳しく>>

3−2.妊娠糖尿病

それまで糖尿病ではなかった人が、妊娠中にはじめて血糖値の上昇など糖代謝の異常が認められ、かつ、糖尿病の診断基準に当てはまらない場合に診断される病気です。

妊娠糖尿病は、ほとんど自覚症状のない病気ですが、流産や早産、胎児の巨大化などさまざまな合併症を引き起こすため、食事療法や薬物療法によって血糖値をコントロールする必要があります。

妊娠中に睡眠時無呼吸症候群になると、睡眠中の低酸素状態が続き、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンのはたらきが悪くなり、血糖値が下がりにくくなります。

そのため、血糖値が高い状態が続いてしまい、妊娠糖尿病を発症するリスクが高まるのです。

【参考情報】「妊娠糖尿病」日本内分泌学会
http://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=94

◆「糖尿病との関係」について詳しく>>

3−3.自動車事故

妊娠中は判断力の低下により、自動車事故を起こしやすいといわれています。

そこに、睡眠時無呼吸症候群によって日中に強い眠気や倦怠感が加わると、さらに事故のリスクが上昇する恐れがあります。

【参考情報】『日本人妊婦の睡眠時無呼吸の実態と日中の眠気との関連 -妊婦の自動車運転事故軽減に向けて』公益財団法人三井住友海上福祉財団
https://www.ms-ins.com/welfare/document/list/pdf/2015/2015_1_06.pdf

◆「運転業務との関係」について詳しく>>

4.睡眠時無呼吸症候群のサインとは

下記のような症状が見られる場合には、睡眠時無呼吸症候群を発症している可能性があります。

 ・いびきがひどくなった
 ・家族から就寝中の無呼吸を指摘された
 ・夜中に何度も目が覚める
 ・日中に強い眠気を感じる

上記のような症状がある方は、まずは産科の主治医に相談しましょう。そこで、睡眠時無呼吸症候群の可能性を指摘されたら、専門医を紹介してもらいましょう。

睡眠時無呼吸症候群の検査には、専用の機器が必要です。自分で病院を探す場合は、検査が可能な病院かどうか、ホームページなどで調べておきましょう。

◆「呼吸器内科で検査と治療ができます」>>

治療の際は、主にCPAP(シーパップ)という装置を用いて、睡眠中に鼻から空気を送り込みます。CPAPは、妊娠中でも使用できます。

◆「CPAP」とは?>>

5.おわりに

妊娠すると、体重の増加によって、睡眠時無呼吸症候群を発症することがあります。

しかし、日中に眠くなっても、ホルモンバランスの変化によるものだと思い込んでしまい、睡眠時無呼吸症候群のせいだとは気づかないことがあります。

睡眠時無呼吸症候群を放っておくと、母体や胎児に悪影響を及ぼす恐れがあります。昼間の眠気やいびきがひどいようなら医師に相談し、必要なら検査を受けて治療につなげましょう。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群の治療について>>

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