寝起きの頭痛といびきの関係~病気の可能性は?
朝起きたときに頭が重かったり、頭痛がすることはありませんか? もしかすると、それはいびきが関係しているかもしれません。
頭痛は疲れや寝不足、肩こりなどで一時的に起こることもありますが、毎日続く場合は何か別の原因が隠れている可能性があります。
この記事では、いびきと頭痛の関係についてわかりやすく解説します。朝の目覚めがすっきりしないと感じる人は、ぜひチェックしてみてください。
目次
1. いびきとは何か
いびきは、狭くなった気道を空気が通るときに発生する音です。
寝ている間に何らかの原因で気道が狭くなると、呼吸で吸い込んだ空気が通りにくくなります。すると、狭くなった気道を通り抜ける際に空気に勢いがつき、気道の粘膜を震わせて音が鳴るのです。
いびきは、疲れやストレス、飲酒、風邪による鼻づまりなどが原因で一時的に出ることがあります。そのような場合は、原因が解消されればいびきも自然に改善するでしょう。
しかし、毎晩いびきをかく場合は、何かしらの病気が関係している可能性があるため、注意が必要です。
【参考情報】『Snoring』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/15580-snoring
2.寝起きの頭痛の主な原因
寝起きの頭痛は、健康な人でも一時的に発生することがあります。
2-1.睡眠不足・過眠
生活習慣の乱れなどで睡眠不足になると、脳の疲れが十分に回復せず、頭痛が起こることがあります。
一方で、寝すぎも頭痛の原因になります。長時間同じ姿勢で眠ると、筋肉がこわばって血流が悪くなり、それが頭痛を引き起こすことがあるのです。
2-2.飲み過ぎ・食べ過ぎ
お酒を飲み過ぎると、翌朝に二日酔いで頭痛に悩まされることもあるでしょう。これは、アルコールの利尿作用による脱水や、睡眠リズムの乱れが影響しているためです。
また、糖質を多く含む食品を一度に食べ過ぎると、頭痛が引き起こされることがあります。
通常、食事によって血糖値が上がると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが分泌され、血糖値が適切に調整されます。
この時、糖質を摂り過ぎると、血糖値が急上昇し、それに伴ってインスリンも大量に分泌されます。その結果、血糖値が急激に下がりすぎてしまい、頭痛を引き起こすことがあるのです。
2-3.肩こり・目の疲れ
目を酷使すると、目の周りの筋肉が緊張し、その影響が肩や首に広がることで肩こりが起こり、頭痛につながることがあります。
特に、長時間パソコンやスマホを見続けたり、前かがみや猫背などの悪い姿勢をとったりする人は要注意です。
さらに、運動不足や、肩掛けバッグをいつも同じ側で持つ習慣も、肩こりを悪化させ、頭痛の原因になることがあります。
【参考情報】『肩こり』日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/stiffed_neck.html
2-4.水分不足
睡眠中は汗をかくため、体内の水分が不足しやすくなります。暑い夏はもちろん、冬でも意外と多くの汗をかいているものです。
このように水分が不足すると、脳の血流が悪くなり、それを改善しようとして血管が広がります。このとき、神経が刺激されることで頭痛が起こることがあります。
睡眠中の脱水を防ぐためには、就寝前と起床後にコップ1杯の水を飲むのがおすすめです。
3.いびきと睡眠時無呼吸症候群、頭痛の関係
起床時の頭痛が一時的なものではなく、毎日のように続いているときは、睡眠時無呼吸症候群が原因かもしれません。
この章では、いびきと頭痛、睡眠時無呼吸症候群の関係について説明します。
3-1.睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気か
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に無呼吸や低呼吸になることを繰り返す病気です。
・無呼吸:呼吸が10秒以上止まる
・低呼吸:通常の呼吸の半分以下の浅い呼吸が10秒以上続く
主な症状は、激しいいびきや起床時の頭痛、日中の眠気などです。いびきの音は大きく、しかも毎晩のように続くため、一緒に寝ている人から「うるさい」「眠れない」と指摘されることもあります。
また、自分では十分に寝ているつもりでも、呼吸が止まるたびに一瞬目が覚めているので、睡眠の質量が下がります。その結果、起床時に頭痛がしたり、昼間に猛烈に眠くなることがあります。
◆「昼間の眠気が耐えられないなら、睡眠時無呼吸症候群を疑いましょう」>>
3-2.なぜ睡眠時無呼吸症候群だといびきが出るのか
この病気の原因には、閉塞性と中枢性がありますが、患者のほとんどは閉塞性です。
・閉塞性:空気の通り道である気道が狭くなることで発症する
・中枢性:脳や神経の病気などで呼吸中枢がうまく働かなくなる
閉塞性の場合、以下のような原因で気道が狭くなり、いびきが発生します。
・肥満:のど周辺に脂肪がついて気道が圧迫される
・骨格:あごが小さい人は、舌がのどに落ち込んで気道がふさがれる
・口呼吸:口を開けて眠っていると、舌がのどに落ち込みやすい
・加齢:筋力低下や女性ホルモン分泌量低下の影響
・睡眠薬:筋弛緩作用のある睡眠薬の服用
中枢性の場合は、いびきはほとんど出ることはありません。
4.睡眠時無呼吸症候群が頭痛を招く理由
この章では、睡眠時無呼吸症候群によって頭痛が引き起こされる理由を紹介します。
4-1.体内の酸素不足
睡眠時無呼吸症候群になると、呼吸が妨げられ、体に十分な酸素が取り込めなくなります。すると、脳は酸素不足を補うため、血管を広げることで血流を増やそうとします。
この時、血管が広がることで周囲の神経が刺激され、頭痛が引き起こされるのです。
4-2.睡眠不足
睡眠時無呼吸症候群によって呼吸が妨げられると、自覚がなくても無意識に覚醒を繰り返しているため、毎晩熟睡できない状態が続きます。
その結果、脳がしっかり休めず、疲れがたまってしまい、頭痛や倦怠感が生じることがあります。
5.睡眠時無呼吸症候群の検査と治療
睡眠時無呼吸症候群の可能性があると感じたら、呼吸器内科や睡眠外来など、検査のできる病院を探して受診しましょう。
検査で病気が判明したら、重症度や原因などに合わせて治療を開始していきます。
5-1.睡眠時無呼吸症候群の検査
睡眠時無呼吸症候群の検査には、簡易検査と精密検査の2つがあります。
<簡易検査>
アプノモニターという小型の医療機器を用いて、自宅で寝る前に装着して検査を行います。
自宅で検査できるのは便利ですが、得られるデータが限られているため、より詳しい検査が必要になることもあります。
◆「簡易検査」についてくわしく>>
<精密検査>
簡易検査の結果、より詳しく調べる必要があると判断された場合は、ポリソムノグラフィー検査を行います。
この検査は原則として1泊入院が必要ですが、簡易検査よりも測定項目が多く、心電図や眼球の動き、脳波などから睡眠の状態を詳しく分析できます。
※当院では自宅での精密検査が可能です
5-2.睡眠時無呼吸症候群の治療
治療では、主にCPAP(シーパップ)を使用しますが、原因や重症度によっては別の治療法を選択します。
<CPAP(持続陽圧呼吸療法)>
無呼吸や低呼吸を防ぐための医療機器です。寝ている間に気道がふさがらないよう、一定の圧力をかけた空気を送り込み、スムーズに呼吸ができるようにします。
◆「CPAP」についてくわしく>>
<ASV(自動調整陽圧呼吸療法)>
主に、中枢性の患者に使用する医療機器です。CPAPが一定のリズムで空気を送り込むのに対し、ASVは患者の呼吸に合わせて空気圧を調整しながら送り込む機能があります。
◆「ASV」についてくわしく>>
<マウスピース>
下顎を前方に固定することで気道の閉塞を防ぎ、呼吸をしやすくする効果があります。軽症〜中等症の患者向けで、重症の人にはほとんど効果はありません。
◆「マウスピース」についてくわしく>>
<手術>
大きな扁桃腺やアデノイドによって気道が塞がれている場合は、手術でこれらを取り除くことで、いびきや無呼吸の改善を図ります。
6.寝起きの頭痛で考えられる他の病気
睡眠時無呼吸症候群以外にも、寝起きの頭痛を引き起こす病気があります。
6-1.高血圧
高血圧は、血圧が慢性的に高い状態が続く病気です。収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90mmHg以上で診断されます。
多くの場合、自覚症状はほとんどありません。しかし、血圧が急激に上昇すると脳に大量の血液が流れ込んでむくみ(浮腫)が発生し、頭痛を引き起こすことがあります。
さらに、吐き気・けいれん・意識障害などの症状が現れることもあるため、早めに血圧を下げる治療が必要です。
6-2.脳腫瘍・くも膜下出血
脳に腫瘍ができて大きくなると、脳が圧迫されて、脳内の圧力が上昇します。その結果、頭痛や吐き気などの症状が現れることがあります。
脳腫瘍の場合、特に朝方に頭痛が起こりやすいのが特徴です。
【参考情報】『脳腫瘍』がん情報サービス|国立がん研究センター
https://ganjoho.jp/public/cancer/brain_adult/index.html
くも膜下出血は、脳の血管が破れ、脳を包むくも膜の下腔に出血が広がる病気です。主な原因は、動脈瘤(血管にできたコブ)の破裂です。
頭痛はバットやハンマーで殴られたような激しい痛みが突然起こるのが特徴です。また、嘔吐や意識障害が伴うこともあり、放置すると命に関わるため、早急な治療が必要です。
【参考情報】『Subarachnoid hemorrhage』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/subarachnoid-hemorrhage/symptoms-causes/syc-20361009
6-3.急性緑内障
眼圧が急激に上昇し、視神経が損傷することで発症する病気です。
眼の中には房水と呼ばれる液体があり、常に作られては吸収されることで、正常な圧力が保たれています。
しかし、この循環がうまくいかなくなると眼圧が上昇して視神経が圧迫され、頭痛・吐き気・眼の痛み・視野の欠損などの症状が現れます。
放置すると失明のリスクがあるため、早急な治療が必要です。
【参考情報】『Angle-Closure Glaucoma』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/angle-closure-glaucoma
6-4.副鼻腔炎
風邪などのウイルスや細菌感染、アレルギーが原因で、副鼻腔(鼻の周りの空洞)に炎症が起こる病気です。
炎症が起こると、粘膜が腫れたり膿が溜まったりして、鼻づまりや鼻水、後鼻漏(鼻水が喉に垂れる)などの症状が現れます。
また、鼻の奥に痛みが生じ、目や頬、頭にも痛みが広がることがあります。
特に、急性副鼻腔炎では強い痛みを伴うことが多いのが特徴です。
7.おわりに
寝起きの頭痛が続く場合、いびきや睡眠時無呼吸症候群が関係している可能性があります。
放置すると健康に悪影響を及ぼすこともあるため、気になる症状がある方は早めに医療機関を受診し、適切な対策をとることが大切です。
睡眠時無呼吸症候群が原因の場合、適切な治療を受けて睡眠の質が向上すれば、いびきも頭痛も改善していきます。
特に、重症の人ほど早い段階で効果が実感できることが多いので、まずはお気軽にご相談ください。