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赤ちゃんから小児期まで、心配な子どもの咳について

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年10月02日

親にとって、大切な子どもが咳をして苦しんでいるのは見過ごせない状況ではないでしょうか。

特に赤ちゃんの頃や就学前の幼児期は、まだまだ発育が未熟なこともあり、些細な咳でも気になってしまうものです。

この記事は、赤ちゃんから小児期まで子どもの咳について、注意したいポイントをお伝えします。

1.赤ちゃんの咳の基本知識


赤ちゃんの咳について知っておくべき特徴や、気をつけるべき症状・病気について解説いたします。

医師に赤ちゃんの咳の症状を正確に伝えることができ、診断の助けになりますので覚えておきましょう。

1-1.赤ちゃんの咳のメカニズムと特徴

赤ちゃんの咳も大人の咳も、基本的なメカニズムは同じです。

風邪やインフルエンザなどの感染症にかかると、咽頭(喉の奥)から上気道にかけて炎症が生じます。それによって、咳や痰などの症状が出やすくなります。
感染症のなかでも、生後6カ月未満の赤ちゃんがRSウイルスに感染すると重症化しやすいので、注意が必要です。

◆「子どもに多いRSウイルス感染症とは?」>>

また、感染症以外でも、ホコリやダニ、花粉やペットの毛などによるアレルギー反応によって咳が止まらなくなることがあります。

◆「喘息でもペットを飼いたい人の対策」について>>

◆「アレルギーと咳」について>>

1-2.赤ちゃんの咳で気をつけるべき症状

咳が長く続いたり、肩やお腹で呼吸をして苦しそうにしたり、「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」という呼吸音がする場合は、喘息の可能性があります。

◆「喘鳴」について>>

また、夜間や明け方は気温や湿度が変わるために、気道の粘膜が敏感に反応してせき込みやすくなります。
 
特に、空気が冷たく乾燥している冬場などは、のどの粘膜が刺激を受けて咳が出やすくなるため、湿度を一定以上に保つことが大切です。

加湿器を使用する場合は、カビが発生しないように注意しましょう。濡れタオルを室内に下げておくだけでも効果的です。赤ちゃんの部屋は清潔にすることを心がけてください。

【参考情報】『Decoding Your Baby’s Cough』Children’s Hospital LA
https://www.chla.org/blog/advice-experts/decoding-your-babys-cough

◆「加湿器を選ぶポイントと注意点」>>

◆「カビと掃除の注意点」>>

1-3.赤ちゃんの咳の音から考えられる病気

赤ちゃんの咳の音を観察すると、病気の早期発見につながります。

<「カハッ」という短く乾いた咳>
風邪の初期症状や喉の異物感によるもの。特に授乳後に多く見られる場合は、ミルクの誤嚥の可能性も。持続する場合は受診を。

<「ケホケホ」という連続する乾いた咳>
アレルギー反応や気道の過敏症が原因のことが多く、特に夜間や朝方に悪化。咳喘息やアトピー咳嗽の可能性があります。

◆「咳喘息」について詳しく>>

◆「アトピー咳嗽」について詳しく>>

<「コンコンコン」と連続して強く出る咳>
百日咳の特徴的な症状で、顔が赤くなるほど激しい咳の後に「ヒュー」という吸気音が続くことも。特に夜間に悪化し、嘔吐を伴うこともあります。
◆「百日咳」について詳しく>>

<「ゴホゴホ」という湿った痰を伴う咳>
気管支炎や肺炎の可能性があり、特に呼吸が速くなったり浅くなったりする場合は要注意。RSウイルス感染症でもこのタイプの咳が見られます。
◆「気管支炎と喘息の違い」>>

◆「肺炎はうつる?うつらない?」>>

<「ケンケン」と犬の吠えるような金属的な咳>
クループ症候群(喉頭炎)の特徴で、特に夜間突然に始まることが多く、緊急受診が必要な場合があります。

◆「クループ症候群」について詳しく>>

赤ちゃんは呼吸機能検査を受けることができないので、体調や症状について保護者の方が把握し、医師に伝えることで正確な診断につながります。

また、軽い喘息の場合は小児科での診断が難しい場合があるので、小児に対応している呼吸器内科を受診しましょう。

2.赤ちゃんの咳と痰のケア方法


赤ちゃんが痰を上手く出せない理由や、痰が絡む咳をしているときの適切な対処法を紹介します。

赤ちゃんは排痰(痰を排泄すること)がまだ上手にできないため、痰が絡まって呼吸が苦しくなったり、痰が詰まって嘔吐することがあります。

言葉によるコミュニケーションができず、意思疎通が難しい赤ちゃんだからこそ、しっかりとした知識もって、痰や咳などによる呼吸の詰まりに注意しましょう。

2ー1.痰が絡む咳への効果的な対処法

痰が絡む咳への効果的な対処法をご紹介します。

<風邪やインフルエンザなどの感染症を発症した後に出る咳>
風邪やインフルエンザを発症した後には、「ゴホゴホ」という、湿って痰が絡んだような咳が出やすくなります。痰が絡んだときは、水分を多く摂らせると、痰がゆるくなり、楽になりやすいです。

<咳き込んだ場合>
咳き込んだ時は上体を起こし、背中をトントンと叩いてあげると楽になることがあります。
寝るときは布団の下にものを挟み、上体がやや高くなる姿勢で寝かせることも、咳き込んだ時に楽になり息苦しさも和らぐので良いです。
柔らかい布団が顔にかかってしまうと危険ですので、気を付けてください。

<発熱時>
発熱時は脱水状態になりやすいため、こまめに水分を補給しましょう。
うまく水分を飲めないときには、唇や口の中を湿らせてあげるだけでも楽になることがあります。

赤ちゃんは咳き込むと吐いてしまうことも多いので、離乳食を進めているのであれば、消化の良い炭水化物の食品を中心にし、いつもより柔らかく調理してください。

◆「風邪とインフルエンザの違い」について>>

◆「痰がからみ、咳が止まらない時に考えられる呼吸器の病気」>>

3.小児のこんな咳に注意

医療業界において、小児とは、7歳以上15歳未満の学童期の子どもを指します。そのため、小児の病気や症状を考える際には、“赤ちゃん”を意味する乳幼児とは切り離して考える必要があります。

学校などに入り社会生活が活発になる小児には、乳幼児にはないリスクがあります。細菌やウイルス感染などのリスクが大きくなるほか、親から離れて活動する上でのさまざまなリスクが付きまといます。
 
「咳」という症状に注目して考えてみると、特に喘息のお子さんには十分な注意が必要になります。

小児喘息の多くは「アトピー型(アレルギー型)」とよばれるものであり、ほこりや花粉などのアレルギー物質が原因で喘息発作が誘発されます。喘息発作時には、激しい咳や息切れ、重症時には呼吸困難を伴うこともあります。

◆「アレルギーによる病気の症状・検査・治療の基本情報」>>

子どものことを知り尽くした親から離れて生活するようになると、不意にアレルギー物質に接触するリスクも大きくなります。

たとえ食事などに含まれるアレルギー物質に十分な注意をしていたとしても、給食の献立に生まれて初めて食べる食品が出ることもあります。

食事だけではなく、運動場の砂ぼこり、冬場の冷えた体育館の空気など、喘息を持つ子どもにとっては、さまざまなシチュエーションがリスクとなり得ます。

このように、喘息を持つ学童期の小児には、乳幼児期にはないリスクがあることを知っておく必要があります。

【参考情報】『気管支喘息』小児慢性特定疾病情報センター
http://shouman.jp/disease/details/03_02_002/

小児は大人に比べ体格が小さく、気道も細いです。そのため、少しでも気道の炎症や異物があると気道が閉塞しないように咳を出そうとします。

咳は呼吸に必要な筋肉を大きく動かすため、頻繁な咳は体力の消耗にも繋がります。
もしも、2週間以上咳が続くようであれば、小児喘息の可能性もあるので、病院を受診するようにしてください。

4.小児喘息を治療するには?


最後に、小児喘息の治療方法について解説します。

子ども(赤ちゃんを含め)であれ、大人であれ、喘息治療は吸入ステロイドとよばれるタイプの吸入薬が基本となります。

◆「吸入薬」とは?>>

吸入薬を吸入するための吸入器にはさまざまなものがありますが、いずれの吸入器も、「本人の意思で吸入」する必要があります。

小学校中学年以上の子どもであれば問題なく吸入できますが、乳幼児や小学校低学年の小児には吸入が難しい場合もあります。

そんな時には、「スペーサー」とよばれる吸入補助器具(吸入薬の吸入をサポートする装置)を用いると良いでしょう。

例えば、マスクタイプのスペーサー(小さなガスマスクのようなイメージ)を用いることで、子供が普通に呼吸をしているだけで必要な薬剤を吸入させることができます。

日本アレルギー学会と日本小児アレルギー学会が連名で推奨しているスペーサーもありますので、気になる方はかかりつけ医に相談してみることをおすすめします。

【参考情報】
・『小さい子どものぜんそく(喘息)のためのお薬はありますか?』アストラゼネカ
http://www2.astrazeneca.co.jp/yourhealth/zensoku-town/asthma/faq/q6.html
・小児アレルギー学会ホームページ
https://www.jspaci.jp/

◆「小児喘息」について詳しく>>
◆赤ちゃんの喘息について>>

5.おわりに


学童期の小児には赤ちゃんにはないリスクがあります。とはいえ、意思疎通ができるメリットは非常に大きく、咳や痰、体の辛さなどの症状を子ども自身が表現することが可能です。

一方、赤ちゃんは具体的な症状を表現することができないため、泣く、ぐずるなど、さまざまな方法で症状を訴えます。

些細な咳や痰でも、赤ちゃんにとっては大きなストレスとなることがありますので、いち早く周りの大人が体調の変化に気づいてあげることが大切です。

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