熱はないのに、咳が止まらないのはどんな病気か

風邪を引くと咳が出るというのは、誰もが経験することで、そんなに心配することはありません。
しかし、「風邪は引いていないと思うのに、咳が続いている」という状態には注意が必要です。
この記事では、「熱はないのに咳が止まらない」という症状について解説していきます。
原因不明の咳に悩まされている人は、ぜひ読んでください。
目次
1.咳が止まらない・熱はない症状の緊急度チェック
<今すぐ受診が必要な症状>
✔ 血痰が出る
✔ 呼吸困難や息苦しさが強い
✔ 胸痛を伴う
✔ 急激な体重減少がある
✔ 声がかすれて戻らない
<早めの受診をおすすめする症状>
✔ 咳が2週間以上続いている
✔ 夜間に咳で眠れない
✔ 階段昇降で息切れする
✔ 痰の色が黄色や緑色
✔ 市販薬が効かない
医学的には、咳は持続期間によって以下のように分類されています。
・急性咳嗽:3週間未満
・遷延咳嗽:3~8週間
・慢性咳嗽:8週間以上
一般的に、2週間以上続く咳は風邪ではない可能性が高く、専門的な診断が必要とされています。
風邪の原因は80~90%がウイルスで、通常は免疫機能が働くため、安静にしていれば自然に治ります。
もし、2週間を過ぎても咳が治まらない場合は、風邪以外の病気の可能性を疑いましょう。
【参考情報】『感染性呼吸器疾患』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/a/a-01.html
2.熱がないのに咳が長引く8つの原因
現代医学では咳の原因となる疾患は非常に多様化しており、実際には熱がなくても咳が出る病気はたくさんあります。
| 原因 | 主な症状・特徴 | ポイント |
|---|---|---|
| 喘息・咳喘息 | ・夜~朝方に咳が出やすい ・乾いた咳が続く ・冷気・ホコリで悪化 ・ゼーゼー、ヒューヒュー音 | 咳だけの「咳喘息」は喘息の前段階。 放置すると約30%が喘息へ移行するため早期治療が重要。 |
| COPD・慢性気管支炎 | ・咳や痰が長期間続く ・息切れしやすい ・進行すると呼吸困難 ・喘鳴を伴うことがある | 主な原因は喫煙。 中高年の喫煙者に多く、放置すると重症化する。 |
| 胃食道逆流症(GERD) | ・食後や横になると咳が出る ・胸焼け、酸っぱい味 ・乾いた咳 ・喉の違和感 | 胃酸が喉や気管を刺激して咳が出る。 薬物治療と生活習慣の改善が重要。 |
| 副鼻腔炎・後鼻漏 | ・痰が絡む咳 ・朝の咳が多い ・喉のゴロゴロ感 ・鼻づまり、顔の痛み | 鼻水が喉へ流れ落ちることで咳が出る。 鼻の治療が咳改善のカギ。 |
| 薬剤性咳嗽(ACE阻害薬) | ・乾いた咳 ・服用開始後に出現 ・夜間に悪化しやすい | 高血圧治療薬の副作用として有名。 自己判断で中止せず医師に相談が必要。 |
| アトピー咳嗽 | ・夕方~夜に悪化する乾いた咳 ・喉のかゆみ、イガイガ感 ・会話や緊張で誘発 | アレルギーが原因。 気管支拡張薬が効かないのが特徴。 |
| 心不全 | ・横になると咳が出る ・夜間・早朝に悪化 ・痰を伴う咳 ・息切れ、むくみ | 心臓の機能低下が原因。 咳だけでなく全身症状にも注意。 |
| 肺がん | ・3週間以上続く咳 ・血痰 ・体重減少 ・胸痛、息切れ | 初期は発熱がないことも多い。 長引く咳は早めの検査が重要。 |
ここでは代表的な8つの原因に加えて、近年注目されている疾患についても解説します。
2-1.喘息・咳喘息
<症状の特徴>
・夜から朝方にかけて咳が出やすい
・乾いた咳が続く
・ホコリや冷たい空気で悪化
・「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音(喘鳴:ぜんめい)
咳だけが主な症状である「咳喘息」は、通常の喘息の前段階として考えられており、適切な治療を行わないと約30%の患者さんが喘息に移行するといわれています。
喘息は完治しにくく、2023年には喘息で1089人が亡くなっています。そのため、咳喘息のうちに治療することが重要です。
咳喘息は気道の粘膜に常に炎症が起こっている状態で、ホコリはもちろん、湯気、冷たい空気、香り、花粉などちょっとした刺激に敏感に反応して激しい咳が出て、なかなか止まらなくなります。
専門医のもと、正しく治療すれば咳喘息の症状は改善するケースが多いです。
2-2.COPD(慢性閉塞性肺疾患)・慢性気管支炎
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、タバコの煙などの有害物質を長期的に吸入することで生じる肺の疾患です。
COPDは、タバコの煙など大気に含まれる有害物質を吸引することで肺に炎症が起こり、最終的には肺の機能が低下し、死のリスクも伴います。
喫煙者の15~20%が発症するといわれ、喫煙歴が長く、1日に吸う本数が多い人ほど重症化する傾向にあります。
慢性気管支炎はCOPDの中に含まれ、気管や気管支が慢性的(長期的)に炎症を起こす病気です。粘り気の強い痰が絡まり、咳や痰が長く続くという特徴があります。
喫煙年数の長い中高年に多く見られます。
<症状の特徴>
・咳や痰が長く続く
・歩行時や階段の上り下りで息切れ
・進行すると安静時にも呼吸困難
・「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音
タバコを吸っている人は、咳や痰が出ても「よくあること」と思いがちですが、放っておくと重症化して入院治療が必要となることもあります。
また、受動喫煙も慢性気管支炎の症状を悪化させることが知られているため、十分な注意が必要です。
2-3. 胃食道逆流症
胃食道逆流症は、胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで起こる病気です。
胃酸が喉や気管を刺激することで、咳が引き起こされます。
<症状の特徴>
・食後や横になった時に咳が出やすい
・胸焼けや口の中に酸っぱい味
・乾いた咳が続く
・喉の違和感や灼熱感
治療には胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカー)が使用され、食生活の改善も重要です。
2-4.副鼻腔炎・後鼻漏
副鼻腔炎(蓄膿症)による後鼻漏(こうびろう)も、熱のない咳の重要な原因の一つです。
後鼻漏とは、鼻水が鼻の奥からのどに流れ落ちる状態を指します。
<症状の特徴>
・のどがゴロゴロする感じ
・痰がからんだような咳
・朝起きた時の咳が多い
・鼻づまりや鼻汁
・頭重感や顔面の痛み
【参考情報】『副鼻腔炎ふくびくうえん – やさしくわかる病気事典』MSD Manualus
https://x.gd/tQALo
2-5. 薬剤性咳嗽(ACE阻害薬)
薬の副作用によって咳が出ることがあります。
最も代表的なのは、高血圧の治療に使われるACE阻害薬による咳です。
<症状の特徴>
・乾いた咳(空咳)
・薬を飲み始めてから数日~数週間後に出現
・夜間に悪化することが多い
・発症頻度は5~35%
この副作用は薬を中止することで改善しますが、心疾患の治療にACE阻害薬が重要な場合もあるため、必ず医師と相談が必要です。
【参考情報】『ACE阻害剤による副作用の咳はどんな咳か?』福岡県医師会
https://www.fpa.or.jp/johocenter/yakuji-main/_1635.html?blockId=39347&dbMode=article
2-6.アトピー咳嗽
アトピー咳嗽(がいそう)は、アレルギーが原因で起こる咳の一種で、気管支拡張薬が効かないのが特徴です。
<症状の特徴>
・夕方から夜にかけて悪化する乾いた咳
・のどのイガイガ感やかゆみ
・会話中や緊張時に誘発される
・中年女性に多い
2-7.心不全
心不全は心臓のポンプ機能が低下する病気ですが、咳も重要な症状の一つです。
<症状の特徴>
・横になると咳が出やすい
・夜間や早朝に悪化
・痰を伴うことが多い
・息切れやむくみを伴う
【参考情報】『心不全の初期サイン-早期発見のために』日本心臓財団
https://www.jhf.or.jp/check/heart_failure/09/
2-8.肺がん
肺がんは、肺に発生する悪性腫瘍です。
特に初期の肺がんでは、発熱や痛みなどの症状がないにも関わらず、咳が長期間続くことがあります。
<症状の特徴>
・3週間以上続く咳
・血痰が出ることがある
・急激な体重減少
・息切れや胸痛
3.咳を緩和するための対処法と予防策
咳が続くと筋肉痛になったり、夜眠れなくなったりと、日常生活に支障が出てくることがあります。
ここからは、咳の症状を緩和して、楽に過ごせるような対処法をご紹介いたします。
3-1. 水分を十分に補給する
水分が十分に取れておらず、気道が乾燥してしまうと、気道が痛みや刺激に敏感になってしまい、咳が出やすくなります。
水分をこまめに補給することで、気道の乾燥を防ぐことができます。
3-2.室内の湿度を保つ
加湿器を使用したり、濡れたタオルを干すなどして、室内の湿度を50-60%に保ちましょう。
乾燥した空気は気道を刺激し、咳を悪化させます。
3-3.感染症予防を徹底する
手洗い・うがい、マスクの着用といった基本的な感染症予防を行いましょう。
気管支炎や喘息は、呼吸器感染症が原因となっていることがあります。
3-4.禁煙を実行する
タバコは気道に刺激を与え肺機能を低下させるため、咳が出やすくなります。
禁煙しただけで咳が止まる人もいますので、咳でお悩みの方はすぐに禁煙を始めましょう。
3-5.刺激物を避ける
香水、洗剤、化学物質などの刺激臭、極端に冷たい空気や乾燥した空気は咳を誘発します。
これらの刺激物を避けるようにしましょう。
4.よくある質問(FAQ)
Q1: 咳が止まらないけど熱がない時、コロナの可能性はありますか?
A: 新型コロナウイルス感染症では、発熱を伴わない咳症状が現れることもあります。
特にオミクロン株以降は、発熱しない感染者も多く報告されています。咳以外にも、のどの痛み、倦怠感、味覚・嗅覚異常などの症状がある場合は、抗原検査や医療機関での検査を検討してください。
Q2: 市販の咳止め薬で様子を見てもよい期間は?
A: 市販薬での対症療法は1週間程度までに留め、改善しない場合は医療機関を受診してください。
特に2週間以上咳が続く場合は、風邪以外の病気の可能性が高いため、早めの受診をおすすめします。
Q3: 夜中に咳が止まらなくなるのはなぜですか?
A: 夜間の咳は喘息や胃食道逆流症の特徴的な症状です。横になることで胃酸が逆流しやすくなったり、気道の炎症が悪化したりするためです。
また、夜間は気道が敏感になりやすい時間帯でもあります。
Q4: 子供の咳が止まらない時の対処法は?
A: 子供の場合、大人よりも症状が急激に悪化することがあります。以下の症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
・呼吸が苦しそう
・食事や水分が取れない
・眠れないほどの激しい咳
・顔色が悪い
Q5: 咳が止まらない時に避けるべき食べ物はありますか?
A: 以下の食べ物は咳を悪化させる可能性があります。
・辛い食べ物(唐辛子、わさび等)
・酸っぱい食べ物(柑橘類等)
・冷たい飲み物
・アルコール
・カフェインの多い飲み物
逆に、のどに優しい温かい飲み物(温かい水、薄めのお茶、はちみつ湯等)をおすすめします。
Q6: 咳が止まらない時は何科を受診すればよいですか?
A: 迷ったら呼吸器内科を受診しましょう。
「8週間以上続く咳の原因は、咳喘息、アトピー咳嗽、副鼻腔気管支症候群の3つで80%以上を占める」と言われているように、長引く咳の原因のほとんどが呼吸器の病気だからです。
5.おわりに
発熱がないと、咳があっても軽く考えがちで、病院を受診するほどではないと思うかもしれません。
しかし、症状が軽いうちに治療を開始するほど、その後の経過も良好なので、早めに原因を突き止め、適切な治療を受けることが大事です。
咳はよくある症状ですが、鑑別(判断)は意外と難しいので、専門的な検査を受けるには呼吸器内科を受診することをおすすめします。






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