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熱はないのに、咳が止まらないのはどんな病気か

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年05月05日

風邪を引くと咳が出るというのは、誰もが経験することで、そんなに心配することはありません。

しかし、「風邪は引いていないと思うのに、咳が続いている」という状態には注意が必要です。

この記事では、「熱はないのに咳が止まらない」という症状について解説していきます。原因不明の咳に悩まされている人は、ぜひ読んでください。

1.熱がないのに咳が長引く原因となる疾患名

「つらい咳や熱に〇〇〇…」といった風邪薬のCMの影響もあってか、多くの人が、咳と発熱はセットであるかのようなイメージを持っているかもしれません。しかし、実際には熱がなくても咳が出る病気はたくさんあります。

 •長期間咳が続く

 •咳によって呼吸も苦しくなる

 •ゼーゼーヒューヒューという息づかいになる

◆「咳が止まらない時に心配な病気の症状・検査・治療」>>

◆「喘息に多い喘鳴とは?」について>>

このような咳が出る時に考えられる、「風邪ではない」「発熱がない」病気について、くわしく解説していきます。

1-1.慢性気管支炎


慢性気管支炎とは、気管や気管支が慢性的(長期的)に炎症を起こす病気です。粘り気の強い痰が絡まり、咳や痰が長く続くという特徴があります。
 
慢性気管支炎の原因は、多くが喫煙(タバコ)です。

受動喫煙も慢性気管支炎の症状を悪化させることが知られているため、十分な注意が必要です。

【参考情報】『受動喫煙 – 他人の喫煙の影響』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-02-005.html

 
禁煙は気管支炎の予防だけでなく症状を軽減する上でも有効で、最も基本的で重要な治療手段であるといえます。
 
当院では禁煙のサポートも行っており、禁煙と咳の治療を並行して行うことが可能です。

◆「禁煙治療」について>>

1-2.COPD(慢性閉塞性肺疾患)


COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、タバコの煙などの有害物質を長期的に吸入することで生じる肺の疾患です。喫煙年数の長い中高年に多く見られます。

咳や痰が長く続くほか、歩行時や階段の上り下りなどで体を動かした時に強い息切れを感じる症状が特徴です。

◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>

タバコを吸っている人は、咳や痰が出ても「よくあること」と思いがちですが、放っておくと重症化して入院治療が必要となることもあります。

喫煙者やその家族で、熱がないのに咳や痰が続く人は、早めに呼吸器内科を受診して相談してください

【参考情報】『慢性閉塞性肺疾患(COPD)』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/b/b-01.html

◆「タバコで咳が出る理由と、咳が長引くときに疑われる3つの病気」について>>

1-3.喘息


喘息は、空気の通り道である気道が慢性的な炎症を起こして狭くなり、呼吸が苦しくなる病気です。

夜から朝方にかけての時間帯に咳が出やすい場合は、喘息の可能性が高いです。原因はさまざまであり、ウイルスや細菌による呼吸器感染症、アレルギー、ストレスなどが挙げられます。

喘息にかかると、熱はないのに激しい咳が出たり、ホコリや冷たい空気で気道が刺激され、咳が止まらなくなることがあります。

◆「喘息」について>>

喘息は、自然治癒が難しく、放っておくと激しい発作を起こして死に至ることもある病気ですが、早めに治療を受けて体調を管理すれば、普通の人と変わらない生活を送ることができます。

「2週間以上咳が続いている」「特定の季節や時間に咳がひどくなる」人は、呼吸器内科で詳しい検査を受けてみることをおすすめします。

【参考情報】『Asthma』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma/symptoms-causes/syc-20369653

◆「喘息発作を起こさないための5つの習慣」>>

◆「喘息治療のゴールと治療法」>>

◆「呼吸器内科で行われる専門的な検査」について>>

1-4.肺がん


肺がんは、肺に発生する悪性腫瘍です。症状のひとつとして、「咳」があります。

特に初期の肺がんでは、発熱や痛みなどの症状がないにも関わらず、咳が長期間続くことがあります。
 
初期はあまり症状が出ず、症状があっても風邪だと思い込んでしまう人も多いのですが、咳や痰、息苦しさが続いているときは、念のため病院で検査を受けてください。

【参考情報】『肺がん』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/e/e-01.html

◆「肺がん」についてもっと詳しく>>

2.咳を緩和するための対処法


咳が続くと筋肉痛になったり、夜眠れなくなったりと、日常生活に支障が出てくることがあります。

ここからは、咳の症状を緩和して、楽に過ごせるような対処法をご紹介いたします。

2-1.水分を補給する


咳の症状を緩和するためには、まず水分を補給しましょう。

水分が十分に取れておらず、気道が乾燥してしまうと、気道が痛みや刺激に敏感になってしまい、咳が出やすくなります。

水分をこまめに補給することで、気道の乾燥を防ぐことができます。

また、加湿器を使うことも、気道の乾燥を防ぐことに有効です。

◆「加湿器を選ぶポイントと注意点」>>

2-2.感染症予防を行う。


手洗い・うがい、マスクの着用といった基本的な感染症予防を行いましょう。

気管支炎や喘息は、呼吸器感染症が原因となっていることがあります。

正しい手洗い・うがいで細菌やウイルスの拡散や、感染症の発症を効果的に防ぐことができ、更にマスクや予防接種を併せて行うことで予防効果を高めることができます。

◆「マスクの付け方と選び方」>>

【参考文献】『水うがいで風邪発症が4割減少』京都大学環境安全保健機構 産
業厚生部門
http://www.hoken.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2015/03/gargle2007.pdf

【参考情報】『正しい手洗い(手指衛生)の方法』国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/kansen/fusegu/tearai.html

【参考情報】『新型コロナウイルスの空気伝播に対するマスクの防御効果』東京大学
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/content/000003662.pdf

2-3.適度な運動を行う


軽い有酸素運動は、肺機能を向上させる効果があります。

ただし、激しい運動や長時間の運動は、逆に喘息発作などを誘発することがあるので注意しましょう。

発作を起こしにくい有酸素運動は、湿度や水温が保たれている温水プールでの水泳や、体操・ヨガなどの室内で休憩を挟みながら行える運動です。

◆「喘息の方におすすめのスポーツと、運動時の発作を予防する対処法」>>

2-4.タバコをやめる


咳の症状が続く場合、タバコはやめましょう。

タバコは気道に刺激を与え肺機能を低下させるため、咳が出やすくなりますし、慢性気管支やCOPDといった病気の原因にもなります。

禁煙しただけで咳が止まる人もいますので、咳でお悩みの方はすぐに禁煙を始めましょう。

なお、新型タバコによる呼吸器疾患も報告されておりますので、禁煙目的で紙タバコから新型タバコへ変えることは、あまり効果がありません。

◆「タバコで咳が出る理由」について詳しく>>

【参考情報】『Characteristics of a Multistate Outbreak of Lung Injury Associated with E-cigarette Use, or Vaping — United States, 2019』CDC
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/68/wr/mm6839e1.htm

3.おわりに


発熱がないと、咳があっても軽く考えがちで、病院を受診するほどではないと思うかもしれません。

しかし、症状が軽いうちに治療を開始するほど、その後の経過も良好なので、早めに原因を突き止め、適切な治療を受けることが大事です。

適切な治療を受けていても症状が一瞬にして消えるわけではありません。痰が絡む、咳が続くといった際の対処法や予防法として、腹式呼吸を心がける、呼気は口をすぼめて出す、適度な運動、部屋の湿度を保つこと、水分補給、禁酒、そして禁煙が挙げられます。

これらを行ったからといって治るということではなく、あくまで対処法、予防法です。

咳はよくある症状ですが、鑑別(判断)は意外と難しいので、専門的な検査を受けるには、呼吸器内科を受診してください。

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

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