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喘息治療に使う吸入薬の種類と特徴、副作用

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年04月28日

喘息の治療薬は、毎日服用する「長期管理薬(コントローラー)」と、発作が起きたときに服用する「発作治療薬(リリーバー)」に大きく分けられます。

中でも基本となるのは、長期管理薬にあたる吸入ステロイド薬です。

この記事では、喘息の吸入薬の種類と使い方について解説していきます。ご自身が使っている薬について確認したい方や、ほかの治療薬に関心がある方は、ぜひお読みください。

1. 喘息と吸入薬の関係


喘息は、気道に慢性的な炎症が起こり、気道が狭くなることで症状が現れる病気です。咳や息苦しさ、ゼーゼー・ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)が主な症状としてみられます。

◆「喘鳴」についてくわしく>>

自覚症状がないときでも、気道の炎症は持続していることが多いため、長期的に治療を続けて炎症を抑えることが重要です。

◆「気道の炎症」の詳細をチェック>>

この炎症を抑えるうえで「吸入」は薬を気道に直接作用させることができすぐれた方法です。

飲み薬は、成分がいったん全身に吸収されてから気道に作用しますが、吸入薬は薬剤を直接気道に届けられるため、少ない量でも高い効果が期待できます。

また、吸入薬は作用が気道に集中しやすく、全身への副作用が比較的少ないとされています。

このように、吸入薬は効果と安全性の両面から、喘息治療の柱として位置づけられています。

【参考情報】『What are the GINA (Global Initiative for Asthma) guidelines for managing asthma with inhaled corticosteroids (ICS) and other therapies?』GINA
https://www.droracle.ai/articles/481901/what-are-the-gina-global-initiative-for-asthma-guidelines

2. 吸入薬の種類と役割

喘息の吸入薬は、大きく「発作を抑える薬(リリーバー)」と「発作を予防する薬(コントローラー)」に分けられます。

それぞれ役割が異なるため、目的に応じて適切に使い分けることが重要です。

2-1. 発作を抑える薬(リリーバー)

発作時に気道が急に狭くなったときに使うのが、以下のような「リリーバー」と呼ばれる薬です。


 サルタノールインヘラー

 メプチンエアー

 ベネトリン


気道の筋肉をすばやくゆるめて気道を広げる働きがあり、吸入後数分で効果が現れます。息苦しさ・咳・喘鳴などの症状が出たときに、必要に応じて使用します。

ただし、頻繁に使う必要がある場合は、喘息のコントロールが十分でないサインである可能性があります。そのときは治療内容の見直しを検討しましょう。

【参考情報】『Short-Acting Beta-Agonists (SABAs)』American Academy of Allergy, Asthma & Immunology
https://www.aaaai.org/tools-for-the-public/drug-guide/short-acting-beta-agonists-(sabas)

2-2. 発作を予防する薬(コントローラー)

コントローラーは、気道の炎症を抑え、発作そのものを起こりにくくするための薬です。症状がないときも継続して使用することが基本となります。

中心となるのは吸入ステロイド(ICS)で、気道の慢性的な炎症を抑えることで、発作の頻度や重症度を低下させます。現在の喘息治療では、このICSが基盤治療として位置づけられています。

さらに、長時間作用型β2(ベータツー)刺激薬(LABA)は、気道を広げる作用が長く持続する薬で、吸入ステロイドと併用することで症状の安定化に寄与します。

2-3. その他の吸入薬

症状のコントロールが不十分な場合や重症例では、追加の吸入薬が使用されることがあります。

抗コリン薬(LAMA)は、気道を収縮させる神経の働きを抑えることで、気道を広げる作用を持ちます。長時間作用型のものが多く、主にコントロールが難しい場合に追加されます。

【参考情報】『Long-Acting Beta-Agonists (LABAs)』American Academy of Allergy, Asthma & Immunology
https://www.aaaai.org/tools-for-the-public/drug-guide/long-acting-beta-agonists-(labas)

3. 代表的な吸入薬一覧


喘息の吸入薬にはさまざまな種類がありますが、日常的に使用して症状を予防する「コントローラー」が治療の中心となります。

ここでは、主にコントローラーとして使われる吸入薬を、成分の構成ごとに整理します。

3-1. 単剤(1成分)

<吸入ステロイド(ICS)>
気道の慢性的な炎症を抑える薬で、喘息治療のすべての基本となる薬です。


 フルタイド

 パルミコート

 アニュイティ

 キュバール

 ・オルベスコ


軽症の場合は吸入ストロイド単剤で使用されることもありますが、多くの場合は他の成分との配合剤へ移行していきます。

3-2. 配合剤(複数成分)

<ICS/LABA配合薬>
気道の炎症を抑える吸入ステロイド(ICS)と、気道を広げる長時間作用型β2刺激薬(LABA)を組み合わせた薬です。


 レルベア

 アドエア

 シムビコート

 フルティフォーム

 アテキュラ


現在の喘息治療における標準的な選択肢として位置づけられており、多くの患者で第一選択として使われています。


<ICS/LABA/LAMA三剤配合薬>
炎症を抑える吸入ステロイド(ICS)、気道を広げる長時間作用型β2刺激薬(LABA)、気道の収縮を抑える長時間作用型抗コリン薬(LAMA)の3成分を組み合わせた薬です。


 テリルジー


中等症から重症の喘息や、治療をしてもコントロールが不十分な場合、単剤やICS/LABA二剤配合では効果が十分でないときに、次の選択肢として使用されます。

3-3. 追加薬

<長時間作用型抗コリン薬(LAMA)>
気道の収縮を抑える薬で、既存の治療に上乗せする追加治療として用いられます。


 スピリーバ

4. 吸入薬の正しい使い方


吸入薬は成分だけでなく、使い方によって効果が大きく左右されます。

ここでは、基本的な吸入方法とデバイス(薬の容器)ごとの違いについて説明します。

4-1.吸入手技の基本

吸入薬を効果的に使うためには、以下の基本動作が重要です。


 ・吸入前に軽く息を吐く

 ・薬剤を吸入する

 ・吸入後に数秒間息を止める

 ・ゆっくり息を吐く


特に「息を吐いてから吸う」「吸入後に息を止める」という2点は、薬剤を気道の奥まで届けるために重要なポイントです。

4-2.デバイスごとの違い

吸入薬にはいくつかのデバイスがあり、それぞれ使い方が異なります。


<pMDI(加圧式定量噴霧吸入器)>

エアゾールタイプなど、薬剤をスプレー状に噴霧して吸入するタイプの吸入器です。L字型の本体に薬剤入りのボンベが装着されており、押すと一定量の薬が霧状に噴射されます。

噴霧された薬を吸い込むことで気道に届ける仕組みで、吸う力に依存しない点が特徴です。一方で、噴霧のタイミングと吸入を合わせる必要があるため、正しい手技が重要になります。

吸気力が弱い人でも使いやすく、スペーサー(吸入補助器具)を併用できる点がメリットです。

【参考情報】『スペーサーの種類とメンテナンス』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/inhalers/feature02.html



<DPI(ドライパウダー吸入器)>

ディスカス、エリプタ、タービュヘイラーなど、粉末状の薬剤を自分の吸う力で気道に取り込むタイプの吸入器です。

スプレーのように噴霧はされないため、タイミングを合わせる必要はありませんが、十分に強く速く吸い込むことが重要です。吸う力が弱い場合は、薬がうまく患部に届かないことがあります。

操作が比較的シンプルで扱いやすい一方、吸い方によって効果に差が出る点が特徴です。


<ソフトミスト吸入器>

レスピマットなど、薬剤をゆっくりとした霧状(ミスト)にして噴霧するタイプの吸入器です。スプレーのような勢いがなく、細かい粒子が長く漂うため、吸い込みやすいのが特徴です。

噴霧と吸入のタイミングを厳密に合わせる必要はなく、ゆっくり深く吸うだけで薬剤を取り込みやすい設計になっています。そのため、吸入操作が苦手な方や高齢者にも適しています。

一方で、使用前の準備(組み立てや初期操作)が必要な点には注意が必要です。

5. 吸入薬の副作用と注意点


吸入薬は内服薬に比べて全身への影響が少ないとされていますが、まったく副作用がないわけではありません。

使用する薬剤の種類によって特徴的な副作用があり、あらかじめ理解しておくことが大切です。

5-1.吸入ステロイド(ICS)の副作用

吸入ステロイドは、気道の炎症を抑えるうえで非常に重要な薬ですが、口や喉に薬剤が残ることで局所的な副作用が起こることがあります。


<口腔カンジダ>

口の中に常在する真菌(カビ)が増殖し、白い付着物や違和感が生じる状態です。免疫が低下しているわけではなく、薬剤が局所に残ることで起こります。

【参考情報】『口腔内科コラム|口腔カンジダ症① ― 発症のしくみと症状について』北海道大学歯学部 口腔診断内科
https://www.den.hokudai.ac.jp/kouge1/news-topics/663

<嗄声(させい:声のかすれ)>

声帯周辺に薬剤が付着することで、声がかすれたり出しにくくなったりすることがあります。


いずれも、吸入後のうがいを徹底することで予防可能です。

5-2.β2刺激薬の副作用

気道を広げる作用を持つβ2刺激薬の副作用として、以下の症状がみられることがあります。


<動悸>

心拍数が増えることで、ドキドキとした感覚を自覚することがあります。

<手の震え>

筋肉への作用により、手が細かく震えることがあります。


これらは一時的で軽度なことが多いですが、何度も出る場合は使用方法や薬剤の見直しが必要です。薬の量を調整したり、種類を変えることで改善できる場合があります。

【参考情報】『Steroid inhalers』NHS(National Health Service)
https://www.nhs.uk/conditions/steroid-inhalers/

6.おわりに

市販の喘息吸入薬は、現在存在していません。咳止めの内服薬はありますが、あくまで一時的な症状を和らげるだけのものに過ぎません。

喘息は、何らかの原因で気道が炎症を起こしている状態であるため、適切な治療を受けないまま市販薬で症状をごまかしていると、どんどん症状が悪化してしまいます。

喘息の症状が現れた場合には、早期に呼吸器内科医を受診し、適切な診断のもとで処方された薬を使用するようにして下さい。

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