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テゼスパイアとは?重症喘息治療の効果・費用・副作用を解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年06月04日

重い喘息で「薬を使っても発作が止まらない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

生物学的製剤テゼスパイアは、喘息の炎症の起点をブロックするまったく新しい仕組みの注射薬です。

この記事では、仕組み・効果・副作用・治療費・他の生物学的製剤との使い分け・治療期間の目安まで、一般の患者さんにもわかりやすく解説します。

1.テゼスパイアとはどのような薬か


これまでの喘息薬は炎症の途中を抑えるものが多かったのに対し、テゼスパイアは炎症が始まる「一番最初のスイッチ」をブロックします。

そのため、さまざまなタイプの重症喘息に幅広く対応できる薬です。

ここでは、承認の経緯・対象となる患者さん・効き方・臨床試験の結果を順にご説明します。

1-1.テゼスパイアの基本情報と承認状況

テゼスパイアは、2022年9月に日本で承認され、同年11月から保険が使える薬として病院で使われ始めました。

アメリカでは2021年12月にFDA(米国食品医薬品局)から承認され、ヨーロッパでも2022年9月にEMA(欧州医薬品庁)が承認しています。すでに世界中で使われており、効果と安全性が国際的にも認められている薬です。

日本の厚生労働省も、テゼスパイアについて「従来の薬でうまく症状を抑えられない重い喘息の患者さんにとって、新しい治療の選択肢になる価値がある」と高く評価しています。

【参考情報】『審議結果報告書』厚生労働省
https://www.pmda.go.jp/drugs/2022/P20220929001/670227000_30400AMX00402_A100_1.pdf

1-2.どんな患者さんに使われる薬?

テゼスパイアは、次のような「重い喘息で従来の薬では十分に症状を抑えられない人」に使われます。

 ・中~高用量の吸入ステロイド薬(フルタイドパルミコートなど)を使っている

 ・さらに、長期的な管理薬(アドエアシムビコートなど)を一緒に使っている

 ・それでも年に1回以上、喘息の発作や症状の悪化を経験している

 ・上記のうち、成人や12歳以上の子ども

◆「重症の喘息」をチェック>>

1-3.TSLPを止める新しい治療

喘息には「2型喘息」「非2型喘息」の2種類があります。

2型喘息は好酸球が多くアレルギーと関係が深いタイプ、非2型喘息は好酸球などの値が低く吸入ステロイドが効きにくいタイプです。

これまでの多くの生物学的製剤は2型喘息向けでしたが、テゼスパイアは、「TSLP(ティーエスエルピー)」という、喘息のもとになる炎症の始まりを引き起こす物質を直接ブロックするため、2型・非2型どちらにも対応できるのが大きな特徴です。

血液検査(好酸球数)や呼気検査(FeNO)の値が低い方でも使用を検討できる場合があります。

1-4.臨床試験で証明されたテゼスパイアの効果

テゼスパイアの効果と安全性は、国際的に行われた大きな臨床試験「NAVIGATOR試験」などでしっかり確認されています。

NAVIGATOR試験では、1,061人の重い喘息患者が、1年間にわたって参加しました。

試験の結果、薬を使わなかったグループは年間平均2.1回喘息が悪くなりましたが、テゼスパイアを使ったグループは0.93回に半分以下に減りました。

【参考情報】『Tezepelumab in Adults and Adolescents with Severe, Uncontrolled Asthma』The New England Journal of Medicine
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2034975

2.テゼスパイアの副作用と安全性について


生物学的製剤は体の免疫に働きかける薬のため、副作用についても事前にしっかり把握しておくことが大切です。

全体的には体への負担が少ない薬とされていますが、まれに重い副作用が起きることもあります。

この章では、よくある副作用・特に注意が必要な副作用・経口ステロイドの長期使用による糖尿病リスクについて解説します。

2-1.よくある副作用

 ・頭痛

 ・注射をしたところの赤みや腫れ、痛み

 ・関節の痛み

 ・のどの炎症(咽頭炎)

これらはいずれも比較的軽い症状で、多くの場合は自然に落ち着くと言われています。また、注射した部分が痛むときは冷やすと楽になることがあります。

毎回同じ場所に注射するのを避け、部位をローテーションすることで、皮膚の赤みや腫れが出にくくなります。

2-2.注意が必要な副作用

重いアレルギー反応(アナフィラキシー)
まれに注射後すぐや数日後に、命に関わるような強いアレルギー反応が起きることがあります。初めての注射は病院で受け、注射後は約30分間様子を見ます。

【参考情報】『Anaphylaxis』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/anaphylaxis/symptoms-causes/syc-20351468

心臓の病気のリスク
長期間の試験では、心臓の血管の病気や不整脈、心不全がやや増える報告があります。心臓病のある方は特に医師とよく相談してください。

感染症のリスク
テゼスパイアは寄生虫感染に対する体の防御にも関わるため、寄生虫に感染しやすくなる可能性があります。投与前に検査を受け、もし感染があれば治療が必要です。

2-3.経口ステロイドの長期使用と糖尿病リスク

テゼスパイアなどの生物学的製剤を使う大きな目的のひとつが、経口(飲み薬の)ステロイドを減らしたり中止できる可能性があることです。

経口ステロイドを長期間飲み続けると、白内障・骨粗鬆症・糖尿病(ステロイド糖尿病)・高血圧・胃潰瘍などさまざまな副作用リスクが高まることが知られています。

なかでも糖尿病(ステロイド糖尿病)は、重症喘息の患者さんが特に注意すべき合併症です。

経口ステロイドは、肝臓から血液中への糖の放出を増やし、インスリンの働きを低下させるため、血糖値が上がりやすくなる場合があります。

また、喘息によるストレスや運動不足も血糖値を上げる要因になりやすいため、重症喘息患者さんは糖尿病を合併しやすい状況にあります。

すでに糖尿病をお持ちの方が経口ステロイドを使う場合は、血糖値の管理が一層重要と言えるでしょう。

◆「糖尿病と喘息の関係」について>>

3.他の生物学的製剤との違い・使い分けのポイント

現在、日本では重症喘息に使える生物学的製剤が5種類あります。

この章では、各薬剤の特徴・テゼスパイアが特に適しているケース・新しい治療目標・治療期間の目安についてまとめます。

3-1.5種類の生物学的製剤と使い分け

2022年のテゼスパイア承認で、日本では重症喘息に使える生物学的製剤が5種類となりました。どの薬が適しているかは、血液検査などの結果をもとに次のように目安が決まります。

テゼスパイア以外には、以下の4種類の生物学的製剤があります。

ヌーカラ(メポリズマブ)・ファセンラ(ベンラリズマブ)
好酸球数が高い(150/μL以上)方に特に有効とされます。

ゾレア(オマリズマブ)
花粉・ダニなど強いアレルギーがある方に適しています。

デュピクセント(デュピルマブ)
アトピー性皮膚炎や鼻茸を合併している方に適しています。

最終的にどの薬を使うかは、検査値・合併症・費用・投与間隔などをもとに、主治医と相談して決めます。

◆「重症喘息と生物学的製剤」について詳しく>>

3-2.治療を続ける期間の目安

厚生労働省の「最適使用推進ガイドライン(テゼペルマブ)」では、投与開始から1年程度を目安に効果を確認し、効果がない場合はそのまま使い続けないよう定めています。

効果がある場合は経口ステロイドの減量・中止を目指しながら継続し、何年か後に中断して状況を見ることもあります。いつ中止するかは、症状や検査値をもとに主治医と一緒に判断することが大切です。

なお、喘息の治療全般において「症状がないから大丈夫」と自己判断で薬をやめてしまうのは危険です。

症状が落ち着いているときも、処方された薬を指示どおりに使い続けることが、発作の予防と安定した生活につながります。

治療に不安や疑問があるときは、まず主治医にご相談ください。

◆「喘息治療」について詳しく>>

3-3.「臨床的寛解」という新しい治療目標

日本アレルギー学会の「喘息診療実践ガイドライン2023」では、生物学的製剤の普及によって、重症喘息の治療目標が大きく引き上げられました。

目指すのは、単に「発作を減らす」ことではなく、「臨床的寛解(りんしょうてきかんかい)」と呼ばれる、より良い状態です。

臨床的寛解とは、次の4つがすべて揃った状態のことをいいます。

・喘息の症状がない
・発作(症状の悪化)がない
・呼吸機能の低下がない
・経口ステロイド薬(飲み薬)を使わなくて済む

吸入ステロイド薬は喘息治療の基本薬として、臨床的寛解の状態でも引き続き使用しますが、テゼスパイアをはじめとする生物学的製剤を使うことで、経口ステロイドを減らしたり中止できる可能性があり、患者さんの生活の質(QOL)の向上につながることが期待できるでしょう。

4.テゼスパイアの治療費と助成制度について


テゼスパイアは高価な薬ですが、医療費を助けてくれる制度を使えば、患者さんの負担を減らすことができます。

4-1.薬の値段と治療費の目安

薬の価格(2026年3月現在)
テゼスパイアの1回分(210mg)の注射は約16万9,000円(シリンジ)〜約17万1,000円(ペン型)です。
2024年11月に費用対効果評価により約4%引き下げられました。

投与の頻度
4週間に1回、年に13回使います。

年間の薬代
およそ220万円になります。

患者さんの負担例
健康保険で3割負担の方は約66万円、1割負担の方は約22万円の自己負担となります。

その他の費用
診察料や検査料なども別途かかります。

4-2.知っておきたい医療費サポート制度

高額療養費制度
医療費が高くなったとき、月の自己負担額に上限が決まっています。年収によって、8万円~17万円くらいが目安です。住民税がかからない方はもっと負担が軽くなる可能性があります。

【参考情報】『高額療養費制度を利用される皆さまへ』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html

※2026年8月より自己負担限度額の改定が予定されています。最新情報は加入中の健康保険の窓口でご確認ください。

小児慢性特定疾病の助成
18歳未満(条件によっては20歳未満)のお子さんは、医療保険における自己負担割合が軽減される可能性があります。

【参考情報】『小児慢性特定疾病の医療費助成に係る自己負担上限額』小児慢性特定疾病情報センタ-
https://www.shouman.jp/assist/expenses

4-3.医療費控除の活用

1年間に支払った医療費の合計が10万円(または総所得の5%)を超えた場合、確定申告で「医療費控除」を申請できます。
テゼスパイアは高額なため多くの方が対象となります。

また、自己注射が可能な方は3か月分をまとめて処方してもらうと、高額療養費制度の自己負担をさらに抑えられる場合があります。

詳しくは担当医や健康保険の窓口にご確認ください。

【参考情報】『医療費を支払ったとき(医療費控除)』国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm

5.よくある質問(FAQ)


テゼスパイアの治療を検討されている場合、他の薬との併用などについて疑問に思うがあるでしょう。
ここでは、患者さんからよく寄せられる疑問に分かりやすくお答えします。

Q: 効果はいつから出ますか?
A: 試験では、使い始めて4週間ほどで効果が出始め、12週間くらいで安定することが多いと報告されています。ただし、人によって違うため、少なくとも3か月ほどは医師と相談しながら様子を見ることが大切です。

Q: 他の喘息の薬と一緒に使えますか?
A: テゼスパイアは吸入ステロイド薬など、これまで使っている喘息の薬と一緒に使うのが基本です。ただし、ほかの「生物学的製剤」と呼ばれる注射薬と併用することはできません。

◆「喘息治療に使う吸入薬の種類と特徴、副作用」>>

Q: 自分で注射できますか?
A: 医師が「自分でできる」と判断し、きちんとやり方を習えば、自宅で自分で注射することもできます。ペン型の注射器もあり、通院の手間が減るのがメリットです。ただし、最初の注射は必ず病院で受ける必要があります。

6.おわりに

テゼスパイアは、重い喘息の治療において新しい可能性を開く薬です。従来の治療では症状が抑えられなかった方にとって、新たな選択肢となるかもしれません。

ただし、薬の費用が高いことや、生物学的製剤ならではの注意点もあるため、医師とよく相談して自分に合うかどうかを確認することが大切です。

テゼスパイアが合わないと感じた場合は、他の生物学的製剤を使えないかどうか、医師や薬剤師に相談してみましょう。

重い喘息で悩んでいる方は、この新しい治療について主治医に相談し、最適な治療を一緒に考えてみましょう。

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以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします

  • 息苦しさやゼーゼー・ヒューヒューという音がある
  • 季節の変わり目や天候の変化で症状が悪化する
  • 運動時に息切れや咳が出やすい
  • 夜間や早朝に咳や息苦しさで目が覚める
  • 以前「喘息かも」と言われたが、治療を中断している

当てはまる項目がある方は、呼吸器専門医に相談してみませんか?

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